2013年3月30日土曜日

シュガーマン 奇跡に愛された男(85分)

監督:マリク・ベンジェルール
原題:Searching for Sugarman
南アフリカじゃ、オレはヤバイぜ

ブルース調の曲と断片的につながれるさまざまな人々のインタビューに眠りを誘われて、ウトウトしながら見てしまいました。題材は面白かったけど、映画のテンポはちょっと苦手でした。
「ネット前とネット後をまたがった存在でないと、コノオトコこうはならなかったろうな」ってのが、興味深かったです。
このドキュメンタリー映画の主人公ロドリゲスは1970年代アメリカでレコードをリリースするも全くヒットせず2枚で引退する。が、なぜか南アフリカでその曲が大ヒット。しかし、本人は南アフリカでのヒットを知らず、彼のファンには彼は不遇の死(ステージ上での自殺説など)を迎えたと思われていた。約20年その状態でしたが、彼の娘がネット上での彼のお訪ね記事を見つけコンタクトを取り、ファンたちがその生存を知り、大喝采の中南アフリカでライブを行う。
彼のいる世界がはじめからネット後の世界だったとしたら、本人から離れたところでヒットしていてもYOUTUBE再生回数などですぐに本人の元にヒットの情報が届くでしょうし、またそんな劇的な死のエピソードがあたかも真実のように伝わることもないと思います。そして、ネット前の世の中のままだったら、彼の娘がお訪ね記事を見かけることもなく、彼が南アフリカのスターとして迎えられることもなかったと思います。どちらの時代もまたがるからこそ、この映画のような奇妙な奇跡起きたのでしょう。 
物語のクライマックスのライブシーンでは、マイケルジャクソンのライブ・イン・ブガレストを思い出しました。ステージに彼が出てくるだけで、いつまでも歓声が鳴り止まない!死んだと思われていた彼が、どれだけ南アフリカに愛されていたのかが分かるいいライブシーンでした。

2013年3月24日日曜日

奪命金(106分)

監督:ジョニー・トー
原題:Life Without Principle
ジョニー・ト-版 現金に体を張れ

「ジョニー・トーがお金の話!?」と気になって見に行きました。意外とコミカルな仕上がりでビックリ。つーか、「お金でお金を稼ぐのを舐めたらアカン!」っていうもっと凝った仕掛けでみせるのかなと思いきや、意外とざっくりとした金融知識で話を作っているゆるい感じにちょっと拍子抜けでした。
まぁ、アベノミクスで沸き立ち始めた日本の金融にヘンに踊らされないために、投資初心者は今見とくといいかも。これを見たら”一攫千金”みたいなへんな金融商品に、「了解しました」とは怖くて言えなくなるはず。映画の中で「投資は未来を予想するゲーム」と謳われますが、未来なんてわかんないですからね。
あ、余談ですが私がよく参加している映画サークル:シネマテーブルの主宰に、この映画のラウ・チンワンが似すぎていて笑いました。こんど、アロハシャツにジャケットという奪命金コスプレしてみてほしいな。
こうやって映画を思い出してると、RHYMESTER「続・現金に体を張れ」が聞きたくなってきました。香港に移民してきて、数々の仕事に失敗して、殺人未遂を犯して、ガス立て篭もりするおっちゃんのくだりとか、宇多丸さんの最後のリリックにかなりかぶってる。エンドロールで「続・現金に体を張れ」かかったら、私泣いちゃってたかも。

Y,E,N (Money) 日本銀行券 (Cash Money)
Y,E,N それが無きゃ 始まらねぇのは百も承知
達してみたい 成り金の境地
金バラ撒いて 飽きるまで放蕩し
まだ余るなら 社会に御奉仕
なのにオレのオヤジは 失業し
片や隣のダンナさんは 過労死
これじゃ希望失って 子供は自暴自棄
見逃せるなら オマエらは非常識
こんな時代やさかい 減らしてえな 諍い
だが一部は失くす見境 おお バブルの夢よ
もう23回 ってなオヤジの遺産 日本の残骸
まるでもう 切るシッポもねぇ トカゲ
それでも生きてんのは 誰のおかげ?
ありゃあ言ってみりゃ おカネの影
道理でカタギは 儲かんねぇ だから
Y,E,N (Money) 日本銀行券 (Cash Money)
Y,E,N それが無きゃ 始まらねぇ

2013年3月22日金曜日

横道世之介(160分)

監督:沖田修一
吉高由里子のぐるぐるカーテン

原作未読、予告編未鑑賞、沖田修一監督作品今回初鑑賞という、全く予備知識がない状態で見に行きました。ポスターのビビッドな印象から中島哲也監督の「下妻物語」「嫌われ松子の一生」のような映画を想像していましたが、その予想ははずれていました。舞台となる1980年代をノスタルジックにも一種の笑いにもせず、違和感なく撮っていたことがすごいよかったです。その世界の中、長崎から上京して法政大学に入学した横道世之介と彼を取り囲む人々がとてもイキイキと動いているのが、見ていてとても気持ちよかったです。
私も地方から上京して東京の大学に通っていたのですが、初めての上京で降りた新宿、入学式での出会い、サークル回り、サークル合宿、クーラー目当ての友達宅外泊などのシーンを見て、自分のことも生々しく思い出すことが出来ました。あの頃ほんの少しの時間を濃密に過ごした友達の悲報を聞いたら、私もきっと哀しみとも懐かしみとも分からない感情にみまわれるんだろうなぁ。
あと、この映画なんといってもヒロイン与謝野祥子演じる吉高由里子がかわいくて!
かわいくて!かわいくて!かわいすぎて、途中から「いや、こんなヤツありえないんじゃないか」と男が思い描くカワイイ女子像に嫉妬してしまいました。他の登場人物が現実感あるだけに、このキャラクターだけ男の理想とするカワイイが詰め込まれたファンタジーに思えてしまって。
特に告白されて恥かしがってカーテンにくるまるシーンが異常にかわいい。(他にも、病室で名前を呼び捨てで呼び合うシーンとか、旅立っていくバスから「ダイスキーーー!」と叫ぶシーンとか見所満載)
それを「私ってカワイイんですもの」的嫌味や不思議&イタイコちゃん的でもなく、かわいくやれる女子なんて現実にいるんだろうか。大人になった彼女もなかなか素敵でとにかくあんな天然素質を持った女子にはかないっこないから、頼むからこれはファンタジーであってほしいとねがってしまいました。

2013年3月12日火曜日

愛、アムール(127分)

愛する人の、音がきこえる
監督:ミヒャエル・ハネケ
原題:Amour

今回、はじめてミヒャエルハネケの映画を見ました。
「ハネケはしんどい」と噂には聞いていましたが、上映時間127分のうち2時間はしんどかったです。私が行った映画館ではほぼ8割が60歳オーバーと思われる方だったのですが、ちらほらいた夫婦2人連れの方が、見終わった後どういう言葉を交わすんだろうと他人ゴトながら心配になってしまいました。人生の先輩のみなさん、これイイ映画ですけど夫婦でいかないほうがいいと思いますよ!
パリの高級アパートに住む音楽家老夫婦の妻が、ある日突然病気に倒れ手術がうまくいかず右半身不随になるところから、この映画の夫による老々介護がはじまるのですが、アパートの外が描かれるのはたった1度きり、病気に倒れる前日に夫婦で行ったピアノのコンサートだけ。そのシーンで2人の“文化度の高さ”と“現在進行形で存在する愛”(夫がふとした瞬間に「今日のキミは特別にきれいだね」という)が見られ、それを見ているからこそ、その後の介護生活で口には出さない2人のつらさを切々と感じることが出来ました。
しかし、あのコンサートシーン映されるのは、ステージではなく観客側定点画像。それをずいぶんな尺流すから、こっちが見られてる側かと錯覚する居心地の悪さありました。他にも、誰かが部屋で一人待たされ観客側を見てるだけのシーンがたびたびあり、なんだか映画の中に心の奥深いところをもっていかれる感じがして居心地悪かったです。
この映画で音楽がかかるのは、実際に映画中にあらわれるCDやピアノからだけで、ほとんど生活音しか聞こえないんですが、エンドロール全くの無音になるところで、映画の味わいものすごく広がりました。無音のエンドロール中帰っていく観客が出す音、それはまさしく生きている者の音。
映画中、ほかの部屋で鳴る音に夫がかけよるシーンがたびたび描かれるのですが、妻がとめた水の音、食器を洗う音、それらは愛する人が生きている音を彼とともに聞いていたんだなと気付かされました。

2013年3月8日金曜日

ジャンゴ 繋がれざる者(165分)

監督:クエンティン・タランティーノ
原題:Django Unchained
握手したくない時、どうしてる?

タランティーノ×西部劇ということでものすごい偏ったバランスの映画かと想像していたら、バランスのいいよく出来ている面白い映画でビックリしました。なんか、私、タラちゃんのこと誤解していたみたい。3時間近くある上映時間がまったく苦になりませんでした。 
西部劇自体、今までみたことがあるのが三池崇監督「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」くらいで、私にリテラシーがほとんどなかったのが残念でした。この映画だけでも十分楽しめたのですが、やっぱり元ネタが分かると面白さが全然違うんだろうなぁ。
主人公ジャンゴに浴びせられる視線で、嫉妬・軽蔑・恐怖・驚嘆などのさまざまな感情をみることが出来て面白かったのですが、その中でも特にサミュエル・L・ジャクソンはさすがの視線ヂカラ。目や口ほどにモノを言うというのをまじまじと感じさせていただきました。(まぁ、サミュエルさん口のほうも達者でしたが)
途中のレオナルドディカプリオ登場とともに、映画にぐっと引き付けられましたね。ディカプリオ登場から話の展開がかわるっていうのもあるのですが、ディカプリオが嫌なヤツを演じるのってなんとも言えない面白さがあっていいです。
映画が大きく動いたシュルツがディカプリオを握手を拒むシーン、「なんで握手しなかったんだろ?」と、映画後考えてしまいました。計算高く冷静だったシュルツが、「人間に犬を喰わせる外道」と握手するのがイヤで計算を破って銃をぶっぱなす。そして、その後撃たれて即死。「死んでもイヤ!」ってよくある台詞ですが、シュルツは同類項になりたくない相手と握手するのが本当にイヤだったんでしょう。
あ、あと、頭巾のくだりがおっかしかった!「頭巾をかぶるのはいいアイデアだけど、馬に乗ったら前が見えない!」「うちの嫁が頑張って30枚も作ったのに文句言うな!」「俺らが見えなくたって、馬には見えてるからいいんだ!」って。ザ・しょうもない口喧嘩からの爆死。くだらなくて最高!頭巾かぶっての口喧嘩って、すげー楽しそうでやってみたくなりました。

2013年3月2日土曜日

テッド(105分)

監督:セス・マクファーレン
原題:Ted
成長してる場合じゃない

公開当初は名古屋市中心街では上映されず、なかなか見に行けなかったのですが、ロングランヒットのおかげで名古屋駅の映画館でも上映開始されました。ので、その上映初日に見に行きました。名古屋ピカデリーさん、ありがとう!
ちなみにAKB全国握手会UZAからはしごで、303人で映画館へ。ちょっと自慢出来る休日の過ごし方。
すげー、ゲスい映画を期待してたんですが、わりと心温まるイイ話で鑑賞後ちょっと困惑。
「いったい何を私は期待していたんだろうか。。。」と考えたんですが、やっぱり男同士のワチャワチャをもっとみたかったっつーことでしょうね、ハングオーバー的な。
そういう意味で、テッドとマーク・ウォールバーグが殴りあうシーンはしびれた。TEDの「お前はなんでも人のせいにしてる」というアドバイスに対し、「8歳に戻れたら、あんな願いはもうしない!」というマーク・ウォールバーグの最低発言、そしてそこからの殴りあい。ぬいぐるみなのに超重いパンチに、「拳で和解も、生半可じゃつとまんねーな!」と女同士にはない男の和解方法に憧れが増しました。
超イイ女ミラ・クニスが駄目男に執着する様に、ひとめぼれの呪いを感じました。
付き合って4年もたってるのに、「別に彼が用務員だっていいの!」って言い放てるセクシーキャリアウーマン。彼女はTEDの存在がマーク・ウォールバーグの成長を阻害していると思いながらも、結局最後には彼女が彼らを助けるという出来っぷり。
いや、マーク・ウォールバーグも愉快なヒトとは思うんですが、人糞を彼女に処理させた時の「もうその手で料理するな、左利きになれ!」発言に、こいつ根腐れしてるなと感じまして。はー、わけもなく惚れる「ひとめぼれ」というのは、本当にしんどいものですな。

あと、最後にあっけなく生き返るのに「フランケン・ウィニー」を思い出しました。個人の成長<周りの受容型 エンディング。いや、それ意外と嫌いじゃないですYO