2015年7月28日火曜日

バケモノの子

監督:細田守
上映時間:119分
パンフレット:720円★★★☆☆(いろいろなスタッフや声優インタビューがたくさん載ってます)

9才のボクが、大人になるまで。

細田守監督作品、前作の「おおかみこどもの雨と雪」がすごい苦手な記憶があったので、今回の「バケモノの子」も自分にはあわなそうだなと思ってました。で、見てみたら、案の定あわなくてちょっとかなしかったです。「時をかける少女」はあんなに好きだったのになぁ。(めったに映画のDVDを買わないのですが、「時をかける少女」のDVDは買って持っています)
パンフレットのプロデューサー斎藤優一郎さんへのインタビューで、「細田監督は、アニメーション映画は常に理想を描くべきだという映画哲学を持っている人です」と記載されているのですが、これを読んで細田守監督作品の自分へのあわなさがなんか納得できました。細田守が描く理想に対する強いメッセージを映画の中に感じて、すごい説教臭く感じてしまうんです。あと、作画の美しさとリアリティがあるだけに、そのメッセージに拒否感を感じる自分自身にも嫌悪感を感じ、鑑賞中めっちゃイライラしてしまう。「時をかける少女」は原作ありきだったから、そんなに気になんなかっただけなのかも。生きるとは、父性とは、強さとは、自分とは、、、そういうことも大切だけどそういうのは密やかに込めて、もっと作り出した世界で圧倒させてほしかったな。
前作の「おおかみこどもの雨と雪」でも東京の国立という本当に存在する街が、美しい作画でリアリティを持って再現されたに興奮しましたが、今回も渋谷が実写以上のリアリティで映し出されていて見てて楽しかったです。その渋谷の中で、おこなわれるアクションシーンが見れただけでも得した気分です。細田守作品で何よりも楽しみにしているのは、実在する街を作画で楽しめることかもしれません。次は大阪とかが見たいかな。

2015年7月25日土曜日

ターミネーター:新起動 ジェニシス

アンチエイジングなしで、アイルビーバック

監督:アラン・テイラー
原題:Terminator Genisys
上映時間:126分
パンフレット:売り切れでした

シュワちゃんがスクリーンに本格復帰した主演作品「ラストスタンド」「大脱出」「サボタージュ」とどれも私が好きな作品ばかりなので、今回のおひさしぶりの「ターミネーター」も期待してたんですが、これは過去作の良かったところまで消しにかかってくる駄目なシリーズ最新作でした。最近だと「96時間 レクイエム」とか「ダイ・ハード ラスト・デイ」とかもそうなんですが、シリーズ全体の評価を下げる最新作ってなんで撮られちゃうんでしょうね。この手の作品は、見込み客がいるという誘惑に勝てないから作られてしまうのだと思うけど、辻褄合わせと新しいことを取り入れることのバランスがうまくとれてないから失敗しちゃうんだろうなぁ。その点、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」とか「 猿の惑星:創世記(ジェネシス)」は、まじで最高。過去作を再び見たくなる最新作って、本当にすごい。ひさしぶりの続編という禁断の果実をかじる以上は、それ相当の覚悟が求められるなと思いました。(とはいえ、私もターミネーターシリーズはシュワちゃんが出演していた1作目と2作目見ていないので、シリーズ通しで見てる方にとってはまた違う味わいがあるのかもしれません)
いろいろこの最新作のターミネーターには駄目なところがあるんですが、1作目の舞台となる1984年にすでに保護者としてシュワおじさんターミネーターがいて、1作目に未来から送り込まれてくる最初の脅威となるターミネーターを速攻で殺したり、はじめから救世主として描かれていたサラの息子 ジョン・コナーがスカイネットの手により敵側にまわってしまったりと、シリーズの面白さの大元になる設定がたいした仕掛けなく新しい話を作るためだけに塗り替えられてしまっている印象があり、本当残念でした。こんだけ過去のシリーズを壊してしまって、この先まだまだ続けるつもりなのかな。
この作品の中で唯一いいなあと思えるこじつけは、シュワちゃん扮するT-800が経年変化とともに加齢するという謎設定。ロボットの機能的には「そんな設定いらんがな!」と思えますが、年取った今のシュワルツェネッガーでのターミネーターが見たいという観客目線に寄り添っていてよかったです。話はつまんなかったけど、年取ったターミネーターは見ててほっこりする楽しさがありました。

2015年7月18日土曜日

アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン

ベッドの中でも弓ははずさない(ホークアイ/子持ち)

監督:ジョス・ウェドン
原題:Avengers: Age of Ultron
上映時間:141分
パンフレット:820円★★★★☆(いままでのシリーズが時系列にすべて紹介されててかなり理解に助かりました。スタッフ・キャストインタビューも充実してます)

前作「アベンジャーズ」は鑑賞していたんですが、その後続いているマーベルシリーズは歯抜け鑑賞で「マイティ・ソー/ダーク・ワールド」「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」は未鑑賞、「アイアンマン3」「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」は鑑賞してました。つーか、パンフレット読んで気が付いたんですが「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」ってこのシリーズの1部なんですね。今後インフィニティ・ストーンをキーに話が関連づいていくであろうことを思うと、楽しみというよりちょっと面倒臭かったりします。「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」はあんまり予備知識なく見れるところが気楽だったんですが、だんだん作品の世界がまじりあっていくのかな。作品を超えての広がりがちょっと面倒臭いくらいにしかマーベルシリーズに興味が持ててなかったりします。
前作の「アベンジャーズ」はなんやかんやいって、悪者役ロキのバカ弟っぷりが魅力的で「発端は兄弟げんかかよ!」つーのが面白かったんですが、今回のウルトロンは「AIの暴走っていまさら?」って感じでした。トニー・スタークがスカーレット・ウィッチに見せられた恐れのビジョンが発端でウルトロンは産み出されたっていうところが新しさがあるところかもしれませんが、「トニーから産まれたからこそ」と感じる所作がウルトロンにそんなに感じられませんでした。双子のマキシモフは悪役としてそこそこ魅力的だったけど途中でアベンジャーズ側に転向しちゃうし、個人的には悪役側に求心力を感じませんでした。やっぱ、魅力的な悪役って映画の中で、大切なんだなぁ。
今回の「アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン」では、ハルクとブラック・ウィドウの恋のさやあて的なエピソードがあるんですが、前作を見ててっきりブラック・ウィドウはホークアイといい仲だと思ってたからビックリしました。つーか、ホークアイが妻子持ちでビックリ!!奥さんが年相応にふけた普通の感じだったし!子供2人もいるし!3人目も仕掛かり中だし!パンフレットの監督インタビューに「ホークアイの暗さは、実は彼が普通の男だから」って書いてあったのですが、たしかに神様や緑の怪物や兵器人間がいるスーパーヒーロー集団にいることになった普通のおっさんだと思うと、ホークアイが気の毒なようなかっこいいような気になってきます。
あと、ブラック・ウィドウの過去がちょっと語られるんですが幼少時訓練学校の卒業の儀式として「不妊手術」を受けさせられるというエピソードに「ひっ!」となったと同時に「もっとそのエピソードにフォーカスして!」って思った。そんなダークなエピソードをきかされても、ブラック・ウィドウをうけとめること、自分がうけとめられることを拒否して逃げるハルクを見て、「ダメな男だなぁ~と思ったりもっとダメな男として開き直れよ」って思ったりしました。

2015年7月10日金曜日

海街diary

監督:是枝裕和
上映時間:126分
パンフレット:720円★★★★☆(紙質が薄いけど雰囲気ある作り。原作者吉田秋生さんの「是枝さんが何かのインタビューで「気がつくと捨てられた子供の話ばかり撮ってる」とおっしゃっていたことがあった。是枝『海街diary』を拝見して、あ、これは親を捨てた子供の物語だな、と思った。・・・」という感想が秀逸)

ともに暮らす、かけがえのなさ

映画を見終わってもこの4人姉妹の暮らしをずっと見ていたくなる「ずっとあいつらを見たくなる映画」でした。四季に彩られた鎌倉のあの古民家で、綾瀬はるか・長澤まさみ・夏帆・広瀬すずが暮らしていると思うと、鎌倉に行きたくなりました。でも、「ずっとあいつらを見ていたくなる映画」でありながら、劇中でこの4人はいつかはあの家を出ていくことになるという予感がし、いつまでも続かない「ずっと」なんだと感じるからこそ、この4人の時間が愛おしくなりました。綾瀬はるかと広瀬すずは長い間独身のままあの家で暮らしそうだけど、長澤まさみと夏帆は結婚願望強そうだしこの容姿でモテないわけがないので、すぐ結婚しそう。結婚したらあの家の中にだれかの旦那が同居することは難しそうなので、家を出ていくことになるんだろうな。出来れば、長澤まさみは離婚して出戻って、綾瀬はるかと昔とかわらない様子で姉妹喧嘩してほしいな。
序盤から中盤にかけては、すずをむかえいれることになった3人姉妹が長期にわたって誰もすずにいじわるをしないことが不思議だったのですが、終盤のお葬式帰りに浜辺に立ち寄るシーンで「お父さん、いい人だったのかもしれないね」「だって、こんないい子を残してくれたんだもん」と3人がすずを見ながら語るシーンで、「いやその父親に捨てられたあなたたちにも、そのよさが残ってるよ!」と捨てられたことで切れたはずの関係のつながりを感じました。親を恨んでても、いい子に育った4人に拍手したくなりました。
あと、是枝監督、ちょこちょこうれしいお色気シーンをいれてくるところが憎い感じがしてうれしかった。ファーストショットの長澤まさみのベッドシーンの見えそうで見えないおっぱいとちゃんと見せてくれる下着姿に、となりの男性が声を出して「おっ!」ってなってて、素晴らしい掴みのシーンだなと思いました。私もあの瞬間から、長澤まさみに掴まれてました。ルックスの素晴らしさは言わずもがなですが、高くもなく安くもなくいい塩梅の長澤まさみが最高だった。葬式参列のために宿泊する旅館で、到着後冷蔵庫を空けて「ビール飲みたい!」と叫ぶまさみちゃんの信用出来る感じも最高。一緒にお酒飲みたくなった。

2015年7月4日土曜日

きみはいい子

監督:呉美保
上映時間:121分
パンフレット:700円★★★☆☆(脚本全文が13ペーシにわたって記載されてます。呉監督今年の5月29日に出産されたそうです。おめでとうございます!)

抱けるうちに抱いておく

「そこのみにて光輝く」の呉監督の作品ということで期待して見にいきましたが、実直に作られた良作とは思うんですがいまいち心を掴まれませんでしたし、揺り動かされませんでした。原作小説のエピソード5編のうちの3編「サンタさんの来ない家」「べっぴんさん」「こんにちは、さようなら」をまとめたということなんですが、だんだん群像劇がつながってくるような物語の醍醐味がなかったように感じました。学級崩壊や幼児虐待など深刻なテーマが描かれるこの作品ですがその重さよりも、「そこのみにて光輝く」にて愛人役で出演していた高橋和也と池脇千鶴が夫婦という設定になっていたことに気が付いた時のほうが「え、あの男と結婚しちゃったの!?大丈夫かな・・・」と心配になりドキドキしました。いい役者さんだしいい演技だけど、「そこのみにて光輝く」の印象が強すぎるのでどっちかは他の役者さんにしてほしかったな。
この映画、一番印象に残ったのは高良健吾が演じる小学校の先生が「家族の誰かに抱きしめられてくること」という宿題を出して、それの結果を生徒たちに聞くシーン。子供たちの照れた表情がよかった。照れながらも「懐かしい感じがした」「やさしい気持ちになった」とか答える子供たちの様子はドキュメンタリーみたいでした。私も同居している2歳7ヶ月の甥を抱っこしたり膝に乗せたりすることがあるんですが、たしかに人を抱きしめるとやさしい気持ちになる。照れずに抱ける年齢のうちにもっと抱いておこうと思いました。