2013年10月31日木曜日

アフターショック(89分)

監督:ニコラス・ロペス
原題:Aftershock
崖の上のポヨ

イーライ・ロス監督の「ホステル」と「キャビン・フィーバー」が大好きなので、製作・脚本・主演イーライ・ロスのこの作品も期待してました。が、正直ちょっと物足りなかったです。
パーティ会場でおこった地震ならではの、ファイナルディスティネーション的な見たこともない嫌な死に方バリエーションがもっと見れたらよかったのになぁ。そういう個人的な期待がもっとも叶えられたのは、わりと序盤の抜け道に案内してくれた掃除婦のおばちゃんがマンホールの蓋を開けた途端にトラックにひかれて首ちょんぱになったシーン。掃除婦のおばちゃんに親切をしたことから思いがけなく助けられるというエピソードだったので「善人は生き延びられるというルールがあるのかな?」と思った瞬間にあの死に方だったので、意表をつかれて「うひょ!」となりました。 
後半、地震をきっかけに刑務所から囚人が逃げて、その囚人により主人公たちが追い詰められ殺されるところは正直あんまり好きな展開ではなかったです。災害のパニックで普通の人が信じられない行動を取ってしまうっていうほうが、怖さ100倍だと思うんですよね。もともと悪い奴らの襲撃とかを描いても、「そりゃ、そうなるよなー」とそんなにゾッときませんでした。そういった意味では、家族を守るお母さんが疑心暗鬼にかられてポヨを撃ってしまうシーンはよかった。撃った本人もビックリしている感じが出ていました。 
あと、この映画冒頭30分くらいの旅行・パーティで浮かれる中年のおっさん3人の描写がものすごく楽しかった。「お前は痩せてるのに、心がデブなんだよ!オレを見てみろ太ってるのに、スマートだろ」とかパーティでポヨがアリエルに助言するところとか、イーライ・ロスがナンパした女子に「サンディエゴにきたら・・・動物園があるよ」と空回るところとかも愉快だった。
「ホステル」も浮かれた若者旅行者の描写がよく出来てたし、イーライ・ロスは旅先の浮かれ感を描くのがすごいうまい気がします。そして、浮かれたヤツがひどい目にあう。しかし、浮かれたヤツがひどい目にあうのって、なんでこんなに気持ちよく見ていられるんだろう。不思議。

2013年10月27日日曜日

ハッピーアイランド(77分)

監督:清川隆
ごめんですむなら、警察と産婦人科はいらない!

カナザワ映画祭2日目はじめの1本は「ハッピーアイランド」を見ました。カナザワ映画祭サイトにて“職が医師である清川監督ならではの医療器具を使った恐怖場面は日本の一般商業映画では不可能な容赦のない映像で、心臓の弱い人には命にかかわる危険を起こすだろう”という紹介があり、めちゃくちゃ期待が高まっていたんですが期待の斜め上を行く作品でした!医療器具を使った残虐なシーンにタオルを噛み締めながら、画面に凝視し楽しみました。

冒頭311描写があって「なんだー、社会問題モノなのか…」とちょっと肩透かしをくらった気持ちになったんですが、いい意味で社会問題でもなんでもなくけしからん感じに311を作品に活かしたホラーエンターテイメントでした。興味本位で立ち入り禁止区域に足を踏み入れた若者たちが「肉ぐらいは県外のモノ食いたいだろ!」というおじいちゃん先生に監禁され、医療器具で拷問を受けるシーンには、恐怖で奥歯が震えました。終盤のカテーテルを使った格闘シーンの尿に血がまざっていくのとか「そんな想像したこともねぇ!」というシーン満載で、素晴らしかったです。
福島の隔離地帯に住むシリヤルキラーことおじいちゃん先生の放つ言葉になんともいえないユーモアがあって、おそろしいおじいちゃん先生をどんどん好きになってしまう不思議。特に「ごめんですむなら、警察と産婦人科はいらない!」というパンチラインは、言葉の意味はよくわらないけどすげー説得力がありました。舞台挨拶時にこのパンチラインはおじいちゃん先生役の方の強い要望でいれたアドリブの台詞と語られたのですが、この方なんと東大卒業の元産婦人科医という経歴の素人さんだったとのこと。おじいちゃん先生、すげーーー。ハッピーアイランドを旅立ったおじいちゃん先生が日本中を旅する続編も見てみたい。我が街「ラブノウン」にもぜひ!

ロッキー・ホラー・ショー(100分)

監督:ジム・シャーマン
原題:The Rocky Horror Picture Show
Don’t dream it,Be it!!

今年のカナザワ映画祭、2本目に見た映画は「ロッキー・ホラー・ショー」でした。はじめての「ロッキー・ホラー・ショー」を立ち見の出る超満員の映画館で体験出来て、楽しかったです。踊りの講習もあったので、劇中のタイムワープもバッチリ踊れました!
映画の内容よりも高橋ヨシキさんの半裸姿の印象のほうが記憶に残っている不思議。上映前には「オレが私財をなげうって、買ったビールだ!」とふるまいビールで開場を盛り上げ、上映中もブロンドで筋肉質の美男子「ロッキー」を半裸で演じてと、ヨシキさんの男っぷりに目が離せませんでした。
私も今度「ロッキー・ホラー・ショー」見る時には、クラッカー鳴らしたり、野次ったりしてみたいな~。

2013年10月24日木曜日

R100(100分)

監督:松本仁志
ダンカン、この野郎!

ポスターを見た時にキャストの豪華さとSMを描いたというエロさもあったので、今回はちょっと期待していたのですが・・・すごい不快な映画でした。不快でも面白い映画ってたくさんありますが、この映画は不快かつテンポが悪くつまらなくてガックリきました。ただ、松本人志監督作品だということで「なぜ、こうなってしまうのか」「何をしたかったのか」と思わず考えてしまい、鑑賞後「うーーーん」とうなってしまいました。
何が一番嫌だったかと考えると、この映画のメインストーリーが、100歳の老人が撮った映画という劇中劇に過ぎなかったこと。このことで、映画の世界と映画を見ている世界の2つの世界を行き来しなければならず、テンポが悪いなと感じました。劇中試写室を出て溜息をつく関係者のシーンには、苦痛を感じました。映画関係者の反応=世間のこの映画への反応ととらえると、エンドロール後の彼らの溜息のシーンは、作り手が「どーせ、お前らには分からないだろ」とサジを投げているようにも思え、この映画を見たこと自体が馬鹿馬鹿しくなりました。
秘密クラブに入会したのをきっかけに、主人公:大森南朋の日常生活に突然S嬢が出てきSMプレイを仕掛けるという設定自体は面白いと思うし、最後の大決戦ももっと血脇肉踊る感じに取れた気がするんです。前回の「さや侍」の時も、「三十日の業」という設定自体は面白かったし。丁寧で細かいリアリティのある描写があった上でこういう奇抜な設定があれば、もっと映画として面白くなる気がします。
劇中色々なSMプレイが出てくるのですが、サトエリが寿司を次から次へと平手でぺっちゃんこにするヤツは本当に嫌だった。目の前にいる寿司職人に失礼すぎる!寿司、もったいない!寿司、食べたい!
あと、大森南朋が快感に至った時のCGで加工された顔が、ダンカンに似ていたのが気になりました。快感の表情って、ダンカンに似るものなのかな?

2013年10月19日土曜日

クロニクル(84分)

監督:ジョシュ・トランク
原題:Chronicle

みんな童貞なら信じられた

シネマテーブルのイベント「アメリカ学園映画講義」にゲストでいらっしゃった長谷川町蔵さん山崎まどかさんがこれから公開のオススメ学園映画として「クロニクル」をあげていたので、8月からずっと公開を楽しみにしてました。しかし、この映画公開当初2週間首都圏限定でしか上映されず、その間にムービーウォッチメンのガチャは当たっちゃうし、ツィッターなどでもさまざま評判を見かけるしで。飢餓を感じて期待がぐんぐん高まっていたせいか地方公開がはじまり、実際に見てみたら「面白かったけど、期待が高すぎた。。。」となんか物足りない気持ちに。はじめから全国公開だったらよかったのにナー。
ついこの間まで放送してたテレビドラマ「みんな!エスパーだよ!」の高校生エスパーたちは終始のん気でくだらない様子だったのに、この「クロニクル」は主人公を中心にだんだんとダークサイドに落ちていく。この差は、「みんな!エスパーだよ!」のエスパーたちが全員童貞・処女だったのに対して、「クロニクル」ではエスパーたちに性体験に格差があったからではないかなと思いました。
唯一童貞だった主人公:アンドリューが初体験のチャンスを自分のゲロでおじゃんにしたところから、どんどん展開が暗くなっていった気がするし。学園のスターになりかけたあの日、アンドリューがちゃんとSEX出来ていたとしたら“Leave me, alone!”とならなかったはず。でも、また違った頂点捕食者を彼は目指していた気もしますが。
空を飛びまわった日の夜、3人で雑魚寝してる場面でマットが「どう考えても、今日以上に最高な日は今までなかった」と告げるシーン。その後崩れていく関係の中でも、なにげないこのシーンのおかげで3人の固い結びつきが思い出されました。
ちょっとしたきっかけで友達が信じられなくなりとりかえしのつかないところまでいってしまうことが普通の高校生の視点から感じられて、やっぱりこの作品学園映画としても素晴らしいなと思いました。「アメリカ学園映画講義」で「くだらない問題を大まじめにとりあげるのが学園映画」と語られていましたが、心が死んでいる大人の私にも思春期の彼らにとってはくだらない問題こそが一大事だということを、あらためて再認識することが出来ました。

2013年10月18日金曜日

そして、父になる(120分)

監督:是枝裕和
瀧を、取り違える

この作品「今年は、福山雅治もリリーフランキーもよく映画に出演してるなぁ」くらいの印象でポスターを見ていましたが、実際鑑賞したら予想外に号泣メーンしてしまいました。
何が泣けたって、慶多くん演じる子役のつぶらな瞳に泣けました。もう1人の子役:流晴くんは育ての親から引き離された不満を口に出すのに対して、けいたくんのほうは自分がどう思っているのかを全く口に出さない。大人に気を使っているのか、涙もこぼさない。でも、つぶらな瞳を静かに潤ませる様子に泣かされました。特に、「慶多にこのカメラをやるよ」と福山雅治に言われ、それを断る時のなんとも言えない表情がよかったです。まだ6年しか人生やってない子供たちにも、人それぞれの感情表現があるんですねぇ。
取り違え事件によって、本来かかわるはずのなかった2つの家族が深くぶつかりあっていくのも面白かったです。そういうぶつかりの中で、逆に自分の夫や妻をものすごく遠くに感じてしまう瞬間を見てとれるのもそら恐ろしく興味深かったです。取り違え事件発覚後に福山雅治が「やっぱりそうか」と言い、その言葉を妻がずっと覚えていてある瞬間にそのことをあげて感情を爆発させるやり取りなど家族という場所にしか吐き出されない感情のドロドロを感じることが出来ました。あと、福山雅治が折にふれ放つ「おれがなんとかします」という言葉が、だんだん頼りなくなるのもよかったです。
あと、直近に見た映画が「凶悪」だったので、中盤の法廷シーンでいきなりピエール瀧が出てきた時には、ぶっこまれるかと思ってあせりました。そして、その後のシーンに山田孝之が出てこないか探してしまいました。

2013年10月9日水曜日

凶悪(128分)

監督:白石和彌
ドン小西のセーター、ぶっこみたい

「絶対好きだと思うから見たほうがいい!」と知人に大プッシュされ、見てきました。おそらく私が折りにふれ「冷たい熱帯魚」が好きだと言っていたので実録殺人モノが好きだと取られ、この「凶悪」を薦めてくれたのかと思います。私のど真ん中の好みとはちょっと違いましたが、面白かったです。原作も読みたくなりました。
「すごくひどく残忍なことが行われているのに、思わず笑いがこぼれてしまう」という映画シチュエーションがなぜだか私はとても好きで、だからこの「凶悪」でもピエール瀧が「人ってすぐ死んじゃいますもんね。ぶっこんじゃいましょ!」と言うシーンや、リリーフランキーが「火つけさせてよ」「(スタンガン)僕にもやらせてよ」はやっぱりうずくシーンでした。宴会の最初、ジジ・ぶぅが「お前らとオレは違うんだよ」とイキがってるとこも好きです。あと、クリスマスパーティのシーンでランドセルから札束が出てくるとこも好き。こうやって思い出してみると、事件回想シーンは私のお好みオンパレードでした。
山田孝之の記者家庭の事情描写が少なければ、もっと自分の好みの映画に近かったかと思うんですが、あの設定があるからこそ数々の事件を身近に引き寄せられて感じられたように思います。自分の家族の問題からは目をそらし、事件の解明に力を注ぐ山田孝之の姿に、「正義に酔う」ことってあるんだなと感じました。
あと、ドン小西みたいなセーターがあまりにも似合うピエール瀧を見て、なんだか私もあのセーターを着てみたくなりました。