2013年11月30日土曜日

悪の法則(118分)

監督:リドリー・スコット
原題:The Counselor
ペットはチータ、セフレはフェラーリ

去年見たリドリー・スコット監督「プロメテウス」老齢の監督作品なのに全く説教臭くなかったことに感動をおぼえ、「こんなじいさんになりたい!」と憧れの気持ちを持ったのですが、この「悪の法則」は教訓めいた台詞とストーリーに満ち溢れていてスコットじいさんの振り幅に恐れいり、さらに憧れが増しました。こういう多面性をもちつつ、老成したいものです。
今作「悪の法則」は正直ちょっと難解で、鑑賞時すぐには誰が誰をどう陥れたのかが正直よく分かりませんでした。キャメロンディアスがずっと裏で手をひいていたのは分かりましたが、ブラットピットも一旦は出し抜いて2000万ドル分のブツを手にしてたという理解でいいのでしょうか・・・ファスベンダーが運び屋を釈放したのは、単なる偶然だったのか誰かの策略だったのか、それもよく分からなかったです。
ただ、サスペンスパートが読み取りきれてなくても、映画自体はとても味わい深く楽しめました。ハビエルバルテムが自分の女のきわどいSEX(?)を急に告白したり、キャメロンディアスが教会に懺悔に行ったり、ファスベンダーが泣きながらプロポーズしたり、とその人物に対して表面的なものとは違う顔を見せられるのに、話の奥行きを感じました。「こーゆー仕事にこそ、ユーモアが必要だろ!」って、無意味に死体を糞まみれの汚水と一緒に運ぶという裏社会の笑いのセンスもすごかった。「死は簡単すぎる・・・」からって、ヤツラすげーこと思いつくな。
あと、チーターをペットで飼っているのにも驚きました。しかも、檻にもいれず、綱もつけず。あんなに人になつくものなんだろうか・・・いつ人間におそいかかるんだろうとソワソワして見てましたが、結局最後まで人を襲わなかったのに、「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 新編 叛逆の物語」でベベが最後までマミさんを襲わなかったことを思い出しました。そういうグレーな存在は、何事もおこらなくても、画面に緊張感を産みますね。

2013年11月26日火曜日

地下幻燈劇画 少女椿(52分)

監督:絵津久秋
寿司3日間で胃腸にくる

カナザワ映画祭3日目、最後の映画は「少女椿」を見ました。
映画の前、最後の金沢飯は駅中のおでん屋「黒百合」でいただきました。3日間毎日寿司を食べ続けたせいで、少し弱っていた胃腸におでんの煮汁がやさしかったです。 
仕掛け上映がおこなわれた「少女椿」、劇場内にはいるとそこらじゅうにバラ撒かれたトイレットペーパー・倒れる包帯人間・ステージ上の狐付などの演出。映画の舞台になる仕掛小屋を思わせる。映画のクライマックスでは大量の煙が、ラストシーンでは桜吹雪が大量に舞い降りてきました。人力4DX、楽しかった!
タイトル名から「椿」という名前の少女が出てくるもんだと思っていたら、最後まで出てこなかった。椿ってなんだったんだろう。そんなことを思いながら、特急しらさぎで金沢をあとにしました。
カナザワ映画祭、映画8本・トークショー2本・寿司3食と満喫出来ました。今年は深夜に漁港とベルハーのライブも見れたし、素晴らしい3日間でした。来年も行きたいナ!

2013年11月22日金曜日

ばしゃ馬さんとビッグマウス(119分)

監督:吉田恵輔
趣味なら、あきらめなくていい

予告編も見ることなく、タイトル以外は麻生久美子が主演するという事前情報だけ鑑賞しました。
シナリオライターを目指して、がむしゃらに頑張る麻生久美子の姿に、なぜか自分を照らしあわせてみてしまいました。というのは、脚本コンテストに繰り返し応募する彼女の姿に、私が約4年継続している「シネマハスラー」「ムービーウォッチメン」のお題映画を毎週見て投稿するという行為となんかかぶって感じられまして。期待満面で選考結果を確認するも一次選考にも残れない劇中の様子が、毎回期待するもめったにメールが読まれない自分の姿とかぶりました。「何でやってるのか、わかんなくなってる」と語る麻生久美子よろしく、「年間ランキング作るのおもしろそう!」という何気ない動機から始まったのに、今や正直なんで毎週続けているのかよく分からなってしまっているこのムービーウォッチメン投稿行為。でも、劇中の麻生久美子が脚本を書き終えてプリントアウトしているシーンでなんともいえない達成感と快感を感じとり、「私も投稿メールを書き終えた時、快感を感じてるからなぁ。簡単にはやめられないなぁ」と思い直しました。(とはいっても、これは単なる趣味なので、やめ時もいつやめたくなるかもよく分からないのですが) 
最後夢を諦めて田舎に帰る麻生久美子とこれから夢に本腰をいれる安田章大の別れのシーンが、すがすがしさを感じてよかったです。あと、優しくも厳しい元彼・岡田義徳もよかった。つーか、自分の夢を手放すとはいえ、あんな風に自分を思ってくれる男が2人もそばにいてくれたら、すげーイイ人生の1ページだな、うん。

2013年11月15日金曜日

清洲会議(138分)

監督:三谷幸喜
やっぱり、こーきが苦手

一昨年見た「ステキな金縛り」がすごい苦手だったので、三谷幸喜監督作品は出来ればもう見たくないなと思っていました。ので、ムービーウォッチメンでガチャを2回もひき直して「キャリー」をやめて「清洲会議」が課題映画に決まった時には、「まじでか!?」と思わず声を出しちゃいました。まあ、でも、実際見てみると「ステキな金縛り」と比べると、苦痛を感じる度合いが少なくホッとしました。三谷幸喜っぽいその場面だけの設定を作ってくすぐり笑いをおこすという手癖の悪さも少なく、ちゃんと筋をもってキャラクターが動いているように感じました。(更科六兵衛とか天海祐希の忍者のくだりとかは「あー、やっぱりこういうことするんだな」とあらためて、三谷幸喜監督と自分との趣向のあわなさを確認しましたが)
ただ、全体的に話のテンポがものすごいのっぺりしていて上映時間が異様に長く感じました。実際に会議の場面を観客側が見ているのに、その内容を伝聞する家臣の様子を描くのとか、2度同じことを聞かなければならずじれったかったです。あと、細かいいきさつはともかく秀吉がこの会議を制するというのは初めから分かりきっている結末なので、そこまで興味を持って話に引き付けられず、実際は138分の上映時間が3時間近くに感じられました。
終盤、柴田勝家の部屋で秀吉と勝家が並んで酒を酌み交わすシーン、大泉洋さんの冷めた表情と役所広司熱っぽい表情の対比がよかったです。ほかのシーンも、メインの役者陣の演技がきっちりしていて見応えがありました。
あと、名古屋生まれ名古屋育ちの私から見ても大泉洋・中谷美紀の名古屋弁は違和感ありませんでした。大泉洋さんは今年年初公開していた名古屋が舞台の映画「グッモーエビアン!」でも名古屋弁を話していたのですが、その時より名古屋弁が格段にうまくなってました。どえりゃー練習してみえたんだろうと、えらい感心したぎゃー。

2013年11月12日火曜日

アルタード・ステーツ(102分)

監督:ケン・ラッセル
原題:Altered states
水平になる時、世界が加速する

カナザワ映画祭3日目の1本目は、駅前ビルでオープン待ちして回転寿司をかっこんでから「アルタード・ステーツ」を見ました。爆音上映だったせいもあり、目がチカチカ耳がバーンとなりましたが、その後忍者寺に行き心の平穏をとりもどすことができました。(忍者寺、オススメ!) 
前日のトークショー:稲生平太郎さんと高橋洋さんの「奇想天外・新映画理論講座」で語られた理論どおりに、“手術台”“放電”の登場とともに話が加速度を増していくこの映画。新映画理論の「体が垂直から水平になると話が展開する」という言説どおり、主人公 科学者エディが装置の中での身体の向きを垂直から水平に変えた途端に進化の退行がすごいスピードになっていて、「新映画理論、単なるこじつけじゃないかも!」とこの理論への興味もわきました。 
何を言っているかしゃべるスピードが早くて字幕じゃその意味にぜんぜん追いつけなかったんですが、映画終盤の科学者同士の口ゲンカがすごいおもしろかったです。マンションの一室で、科学者:エディが寝込んでるのにかまわず、他の人たちが思いっきり口ゲンカをはじめるという構図も面白い。私、「おとなのけんか」もすごい好きなので、集合住宅で口ゲンカっていう構図が好きなのかもしれません。

2013年11月9日土曜日

獣人島(70分)

監督:アール・C・ケントン
原題:Island of Lost Souls
だが獣姦はない

カナザワ映画祭2日目2本目は「獣人島」を見ました。
カナザワ映画祭直前、一緒に行くシネマテーブルのメンバーと焼肉を食べながら「カナザワで映画、なに見る?あの、“獣姦島”ってヤツも面白そうだよね!」と嬉々として語っていたワタクシ。「ソレ、獣人だよ!」と適切なツッコミいただきましたが、映画を見てみるとあわや獣姦という話だったのでビックリ。“獣姦島”アナがち間違ってなかったネ! あと鑑賞後、科学のタブーと性のタブーを飛び越える映画「スプライス」をひさびさにみたくなりました。
動物を科学で急速な進化をさせて、ほぼ人間に近い生物とするモロー博士の研究。博士は、その進化を証明するために、島に訪れた男・パーカーとその生物:ロタに生殖行為をさせようとたくらむ。産まれてはじめて恋をしたロタが本を池に捨てるとことか、最後に自らの命を捨ててパーカーを救うところなど、進化したモノならではの哀しみを感じる場面がよかったです。また進化した島の生物たちが進化する前の動物の性質をちゃんと受け継いでいて、犬から進化したヤツは飼い主に従順でモロー博士を最後まで守ろうとするとことかも哀しかったです。生き物の性(サガ)には逆らえないものなんだなと感じました。
そして、なんといってもこの映画の見所は、モロー博士(チャールズ・ロートン)の顔のおそろしさ!士は悪そのものといった顔をしていて、「顔面説得力ってこういうこと!」と思いました。

2013年11月7日木曜日

劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 新編 叛逆の物語(116分)

総監督:新房昭之
監督:宮本幸裕
閉じた幸せなんかいらない

TVアニメ全話と劇場版 前編後編とも鑑賞済みの状態で見に行きました。TV版アニメは、放送終了半年ぐらいたって、友人にすすめられ鑑賞しました。前劇場版は映画館に見に行きました。
TVシリーズと前劇場版2作とあわせて話がきちんと終わっていたので、今回の新編はどうなるんだろうと思っていましたが、これを「大いなる蛇足」ととるか「創造的破壊」ととるか難しいところです。ただ、前の段階で話に美しく句点が打たれていたので、この後どう続いていくか分からない現時点では、まだ「大いなる蛇足」と個人的には思っています。 
ほむらとキュゥべえの台詞説明が多く、キュゥべえの試みた実験にどうやってほむらがひっかかったのか、ほむらははじめから「そのつもり」だったのか、そこらへん1度見ただけでは分かりませんでした。いままでのシリーズに比べて、難解さが増したと感じました。
ほむらが自身の内部に作った結界世界がとても幸せで平和なものだっただけに、その後の展開に「はぅーーー」となりました。好きな人が神様になった場合、自分は悪魔になるっていう展開、私はデビルマンを思い出しました。
今までのシリーズでは早々に死んでしまっていたマミさんが、最後まで生きていてずっとおっぱいを拝めたのが、個人的にはうれしかったです。ただ、マミさんが自分を喰った魔女をいつも連れているのでいつマミられるのかとお茶会のシーンとかでもドキドキしてしまいました。でも、最後までマミられないと、それはそれでちょっと残念でした。。。

2013年11月4日月曜日

バーニー みんなが愛した殺人者(99分)

原題:Bernie
監督:リチャード・リンクレイター
逆村八分 in テキサス

シネマテーブルの課題作だったので鑑賞しました。事実を映画化しただけでなく、バーニーに関わった実際の街の人が劇中インタビューに出てくるというかわった構成の映画。バーニーに殺された被害者への悪口を、一般人が言いまくっているのがすごいです。殺人者をあれだけ擁護する方々に、「人間って見たいモノしか見ないんだな・・・」と感じましたね。シネマテーブルで、「山口連続放火事件」を思い出したという感想が多かったのも印象的でした。
ただ、現実の奇妙さにフィクションである映画が勝てないというか、映画化したことにより何を見せたかったのかがいまいち伝わってこず残念でした。

 あと、「イノセント・ガーデン」「嘆きのピエタ」「バーニーみんなが愛した殺人者」とシネマテーブルで扱った3作品「冷蔵庫に死体をいれる」というモチーフが偶然にもかぶってて、ビックリした。そりゃー、今年の夏冷蔵庫にはいるネットDQN画像事件が連続するハズだわ~。シンクロニシティ!