2015年10月30日金曜日

ジョン・ウィック


殺し屋たるもの、充電は切らさない

監督:チャド・スタエルスキ
原題:John Wick
上映時間:103分
パンフレット:720円★★★☆☆(ガンフーや銃器やマッスルカーの解説など、映画の見どころポイント豆知識がまとめてあって興味深い)

「ついに、あの男が帰ってきた!」感をあおる予告編に、「いやいや、キアヌ、去年「47RONIN」にも出てたし!天狗に育てられてたしっ!」と”キアヌ is back.”なアジテーションに乗れず本作あまり期待していませんでした。が、「犬を殺された男が復讐で、マフィア皆殺し」という信じられないようなプロットを説得力をもって演じ切るキアヌの、スマートでかっこいいのに何故かちょっと抜けみえる感じに新たな魅力発見出来ました。見た目は切れ者の殺し屋にはとても見えない。でも、何かの異常者には見える感じ。
殺し屋がつかの間の休息を求めるために泊まる謎のコインが流通するホテル、コンチネンタル・ホテルが面白かったです。このホテルに滞在している間は、殺し屋は「仕事」をしてはいけない。キアヌが戦闘から血だらけになって帰ってきて、フロント係に「クリーニングを頼む」と伝えても、「その汚れは落ちないと思いますが」と真顔でジョークをかましてくる動じない感じが素晴らしい。傷だらけの殺し屋にバーボンをすすめたり、死体処理の隠語が「ディナーをご用意します」というのもなんだかリアルさを感じます。こういうしっかりとしたホテルの掟を破る女殺し屋に、きっちりとした制裁がもたらされるのもよいです。あそこ一般客も泊まれるのかなぁ。泊まってみたいな~。
あと、この映画、キアヌが亡き嫁との思い出の動画をたびたび見て、それにより自分の戦意や生きる意欲を吹き返させるのですが、最後の戦闘が終わった後、車からよたよたと落ちたキアヌが再び例の動画を再生したシーンに「おい、まだそのスマホ、充電残ってとったんかい!」って思った。映画の中でスマホを充電するシーンとかなかったけど、見たいものをいつでも見れるようにするためにちゃんと充電を怠っていなかったキアヌ、かわゆい。やっぱりスマートフォンの充電は切らせてはいけないなって、当たり前のことを再認識させてくれるシーンでした。そして、ラストの動物病院で殺された犬・ビーグルとは全然違う種類の犬を家に連れてかえる、「犬ならなんでもよかったんかい!」と突っ込みたくなるわりとこだわりのないキアヌもかわゆい。

2015年10月21日水曜日

バクマン。


読者のためより、自分のために

監督:大根仁
上映時間:120分
パンフレット:720円★★★★★(ジャンプコミックスを模したカバー帯風デザインは見事!監督・キャストにとどまらず、原作者から編集者までいろんな方のインタビューが乗っていて読み応えたっぷり)

原作を読んだことがなく、「「バクマン。」って「漫才を組む話なのかな~」と思っていたんですが、それは勘違いだったことに映画の予告編を見て気付きました。漫画(特にジャンプ掲載作品)を描くメタ漫画ってすごい面白そうで、原作も読みたくなりました。大根仁監督ということで「モテキ」の時の背景演出を思い出し、「今回もきっとサブカル小道具による背景演出バッチリなんだろうな」と思ってましたが漫画執筆部屋・編集部・着ているTシャツ等こだわりを想像以上に感じれました。(ただ「モテキ」のほうが主人公1人の人生を深堀して想像出来るっていう点で、背景演出の面白見をより感じれたように思います)
この映画、青春メイクドリームの疾走感が気持ちよかったです。特に序盤でシュージン・神木隆之介とサイコー・佐藤健が原作と作画でコンビを組み、はじめて漫画執筆をし、はじめて出版社持ち込みをし、編集の山田孝之に「え、はじめての作品なの?」と驚かれ名刺を渡され、そこからどんどんトライ&エラーで漫画の腕と評価をあげていくのがすごい楽しいかった。そして、実際に書かれた漫画が、ちゃんとしてるしたくさんあって、「これだけのオリジナル原稿どうやって用意したんだろう」ってすごい疑問に思いました。出版社の協力があったとしても、あの量はすごい。
自分的にはサイコーとシュージンの連載が決まって、高校生漫画家バトルがはじまる直前までが特に楽しくて、そこからは少しトーンダウンする感じでした。個人的には、ペンを剣に見立て白バックでサイコー・シュージンがエイジとバトルするシーンよりも、実際に机に向かって漫画描いているシーンのほうが面白かったです。
映画を見てて、サイコーかシュージンどっちかの親が「うちの子をそそのかさないで!」ってそのうちしゃしゃりでてくるだろうと思っていたんですが、叔父役の宮藤官九郎がわりと出番多いのに対して、両者の親は映画が終わるまで一切出てこなくてびっくりしました。サイコーとシュージンお互いの自宅描写さえない潔さ。フィクションにおいて、語る上で邪魔になるものは中途半端に映すより、一切描かないという選択肢もあるんだなと思いました。
あと、この映画のヒロイン小松菜奈が佐藤健に対して「先に行くから」と言って別れたのに対して、映画のラストシーンを飾る「この世は金と知恵」で彼女を模したヒロインが最終カットで「ずっと待ってる」と言って締めるところに、者が自分の作り出すフィクションによって少しだけ自分の現実を救う様が見れたのがよかったです。打ち切りの憂き目にあったんだし、最後は自分のために描いたっていい!許す!

2015年10月17日土曜日

アントマン


持つべきものは友達と

監督:ペイトン・リード
原題:Ant-Man
上映時間:117分
パンフレット:720円★★★★★(マーベルシリーズにおけるアントマンの立ち位置(「アイアマン3」から始まったフェーズ2の最後が本作。次のフェーズ3は「キャプテン・アメリカ/シビルウォー」からはじまる)が解説されてて興味深い。前作「アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン」もそうだったけど、マーベルのパンフレットは内容が充実してて買って損なし。)

予告編の「列車にひかれた!」と思いきやひきで見るとおもちゃのレールセットのトーマスがカタリと落ちるだけの絵が、リアルさがあるゆえなんとも言えないクスリ感があって「面白そうだな~」と思っていましたが、この「アントマン」本編はもっと面白かったです!
今、予告編を見直したんですが、大きな見せ場のアリをコントロールするシーンが予告編で一切使われてないのはすごいと思いました。予告編であつかわれてなかったので、「アントマン」の最も楽しい部分といっても過言ではないアリを駆使しての潜入や戦闘シーンを予備知識ゼロで存分に楽しむことが出来ました!本国版の予告編も確認してみたけどそっちはめっちゃアリでてくるから、あれだけ美味しい特殊能力を本編のお楽しみを残してくれた日本版予告編制作スタッフに感謝です!もしかしたら、「(アリの大群を見て)グロい映画かな?」ととらえられてしまう恐れがあるからアリの映像使わなかったのかもしれないけど、ヒーローの特殊能力に本編を見てから知るお楽しみがあるのはうれしいものです。
マーベルシリーズの直近の前作「アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン」で、弓がうまいことを除いては普通のおじさんに過ぎないフォークアイにスポットがあてられたのも新鮮でしたが、今回の「アントマン」では盗みを働き懲役くらい釈放後も養育費が払えないため娘に会えない負け犬といってよいおじさんが主人公だというさらなる新鮮さがありました。また、主人公スコットを取り囲む友達たちのどうしようもなさも最高。スコットが釈放されるのを車で迎えにくるルイスのエピソード語りに無駄がありまくる感じが愉快です。あの語りの再現シーンは巻き戻してもう1回みたいです。あと、映画冒頭、そのルイスが「俺は嫁も失ったし、全部失った!」「けど、この車がある!ガハハ!」と能天気に笑っていたんですが、その唯一手元にある車がこの映画を通してどんどん改造されいろんな任務に役立つ姿が見れるのが思い返すとけっこうジーンときます。ルイスはすげ~馬鹿だと思うけど、なくしたものを悔やむより、手元にあるものに感謝する姿にはかっこよさすら感じます。こんな下衆くて良い友達がいるのもアントマンの魅力です!

2015年10月10日土曜日

心が叫びたがってるんだ。


奇跡を引き寄せるなら、ミュージカルできまり
監督:長井龍雪
上映時間:119分
パンフレット:900円(製作者・キャストインタビューともに充実しています。声優の女性の写真、みんなかわいくてびっくりする。)

映画館で予告編を見た記憶もなく、タイトルとアニメ作品だということを知ってるくらいで、特になんの予備知識もなく見に行きました。作画が美しくて、登場キャラクターが多いのにすごい分かりやすい作品で面白かったです。ちょうど今、自分がハロープロジェクトのメンバーで上演される演劇女子部ミュージカルにはまっているので、映画の中のイベント「地域ふれあい交流会」で登場人物の高校生たちが「めんどくさい」「はずかしい」と初めは拒否反応を示しながらも、一生懸命なクラスメイトの姿に引っ張られてオリジナルミュージカルを熱中して準備し演じる様子が個人的にタイムリーで面白かったです。
「古今東西ミュージカルってのは、たいてい奇跡が起きるもんなんだよ」という作中の担任である音楽教師の台詞がありますが、これはよく分かるな~と思いました。私も昔は作中で突然登場人物たちが歌い始めるミュージカルを馬鹿にした気持ちでみていたんですが、いまは歌の力で強引に話が吸引されるのをとても気持ちよく感じるし、そこにおける奇跡は全然受け入れられたりします。歌と踊りで話が展開するのって快感だし、そこで奇跡が起きてもなんの不思議もないなという感じがします。
ただ、この「心が叫びたがってるんだ。」、あまり納得がいかないエピソードがストーリーの根幹のところにあって、全体としては面白いと思うけどちょっとノレなかったです。
私が納得いかなかったエピソードは、主人公の順が幼少期に離婚する父親が家を出ていく際に順に対し「全部、お前のせいじゃないか」と言われるところ。その前段の、順が本物の城だと勘違いしていたラブホテルから父親が母親以外の女性と出てくるのを目撃し、それを喜々として母親にしゃべるところまでは、「子供が知らないコトがあることが原因で、こういうことが起こるのは面白いな~」と思ったし、それがきっかけで離婚に至るのも理解出来るんですが、それをうけての父親の反応があまりにもひどすぎる。子供のおしゃべりが原因で離婚したんじゃなくて、自分の不倫と性格の悪さが原因で離婚したにすぎないと思う。ああいう大人の八つ当たりでしゃべれなくなるほどのトラウマを子供がおってしまうことが理不尽で、話が終盤にさしかかってもあの父親のことを思い出して腹がたった。っていうか、ああいう物事の原因を弱者のせいにするような男とは、別れて正解だと思う!
あと、冒頭のエピソードは「順ってそんなにおしゃべりかな?」とか「夜食弁当を用意する仕事ってなんだったんだろう?」とか個人的に色々気になった。昼間に不倫相手とラブホテルに行っておいて(おそらく仕事だと偽って)、妻が用意した夜食を食べて仕事をスーツでやる仕事ってなんだろう???テレホンオペレーターのスーパーバイザーとかかな。

2015年10月2日金曜日

キングスマン


ワインにはマクド、はめるならアナル
監督:マシュー・ボーン
原題:Kingsman: The Secret Service
上映時間:129分
パンフレット:720円(★★★☆☆:小型サイズの装丁にコミックっぽい構成ページがあるのがかわいい。)

映画友達に「最近見た映画で面白かったの何?」と聞いたら、2人から「キングスマンが面白かった!あれは、絶対映画館で見るべき!」との回答が返ってきたため「これは見なきゃ!」と思っていました。ちょうど、Perfumeメジャーデビュー10周年記念ライブのために東京に行った時に、空き時間を過ごすのに困っていたのでその時間で鑑賞しました。(10年ぶりくらいにヴァージンシネマズ六本木に行ったけど、六本木ヒルズも開業当初に比べたらかなり落ち着いた雰囲気になってて歩いてて楽しかったです。映画館の中はそうでもなかったけど、映画館周辺は可処分所得多そうな人が多かったな。)
スーツでかっこよくキメたスパイ物といったら「007」が思い浮かぶんですが、この「キングスマン」もスーツでキメたコリン・ファースがめちゃくちゃかっこよかったです!しかも、そのかっこいいスーツが防弾仕様というオドロキ。そして、武器が仕込まれた傘や万年筆や靴といった秘密道具の数々。そのクールな容姿と遊びゴコロの多さのギャップがよかった。また、登場人物が全員わりと俗物的なところも素敵です。特に、敵役のサミュエル・L・ジャクソンのスポーツカジュアルを着たIT長者の俗っぽさがよかった。「これが、ワインに合うんだ!」って言って、ディナーに出てきたのがマクドナルドのセットだった時の「金持ちも極まると、逆にそーゆーのもありなのか!」って俗っぽさ。あと、エグジーがちゃんとプリンセスのお尻にハメに行くところとか、最後までお高くとまらぬ俗っぽさがあってそれが癖になっちゃいます。
クライマックスで頭がボーンって爆発するくだり、私がその年のベストにしていた2013年公開映画「キャビン」のモンスターが次々とエレベーターから降りてきて人々を虐殺していくクライマックスシーンを思い出して愉快でした。すごい残酷なことが起きているのに、すげー笑えるという話のうまさ。あと、コリン・ファースがあっけなく死んでしまったのを悲しんでる暇もなく物語が推進していくバランスもすごかったな。続編が出来るとの噂があるとのことですが、楽しくてずっと見ていられる作品なので、「キングスマン」是非シリーズ化してほしいです。