2015年12月25日金曜日

リトルプリンス 星の王子さまと私

オトナになるって難しい!!!

監督:マーク・オズボーン
原題:The Little Prince
上映時間:107分
パンフレット:720円(★★★☆☆:2ページの漫画で「星の王子さま」の内容が解説されていて分かりやすい。マーク・オズボーンに「星の王子さま」を送った彼女が”今の嫁”であるという良いエピソード付き。)

2週間程前に光文社古典新約文庫版で野崎歓訳の「ちいさな王子」を読んだばっかりだったので、タイミリーなタイミングで映画を見ました。この映画は2種類のアニメショーンの表現方法で描かれていたのですが、ストップモーション・アニメーションで表現した原作小説のイメージは、あたたかみとせつなさがあり原作そのままの印象があってとてもよかったです。女の子と老夫婦が住む”現実の世界”をCGアニメーションという別表現を使ったのも世界の違いが分かりやすかったですし、原作小説の世界との切り替えの違和感もなかったです。
表現方法について文句はないのですが、ストーリーにおいて大人になった星の王子様が出てくるというのが個人的には好きではなかったです。自分的には原作小説の中で王子は砂漠で蛇にかまれ、「死」と取れる形で「星への帰還」を果たしたこと哀しいハッピーエンドがこの物語をいつまでも心に残るものにしている一因でもあると感じており、この映画で大人になってすべて忘れてしまった王子が出てくることが原作の良さを損なっていて気持ち悪く感じました。「王子の言うことなんて子供だから言えることなんだ」という大人の諦めに似た感想が、実際に大人になった王子が仕事の出来ない掃除夫になったのを見てると「ほんとうに大切なものは目に見えないとか言ってる場合じゃないじゃん」という気にさえなってきてしまいます。普及の名作の続編を作るというのは、かなり志の高いチャレンジだとは思うんですが、いろいろ配慮してやってもやっぱり難しいんだなぁと感じました。
あと、女の子がトランクを持って飛行士のところにおしかけるシーンを見て、「恋人たち」で光石研をトランクを持っておしかけた成嶋瞳子を思い出しました。おしかけた後に男の言動で興ざめして家に戻るところまで一緒!女がトランク持って男の元におしかけたら、興ざめさせて帰させるのが映画のセオリーなのかもしれませんね。しかし、思い返すと光石研が成嶋瞳子の網タイツを脱がしてシャブを打ったシーンは笑えるし哀しいし名シーンだったな。

2015年12月19日土曜日

スター・ウォーズ/フォースの覚醒


「あんた誰?」と思った時、「お前誰だよ!」と思われてる

監督:J・J・エイブラムス
原題:Star Wars: The Force Awakens
上映時間:136分
パンフレット:1,000円(★★★★☆:ノーマル版。およそ14ページにわたり写真付きで映画のあらすじが書いてあり、内容を振り返りやすい。旧シリーズのあらすじと当時の観客の反応も書いてあってためになる)

スターウォーズに関しては、3年前に3D化して再上映された「STAR WARS エピソード1/ファントム・メナス」とジョージ・ルーカス監督とスターウォーズファンを描いた「ピープルVSジョージ・ルーカス」しか見てませんでした。が、ムービーウォッチメンの課題作品になったので公開初日に見てきました。いまさら中途半端に予習するよりも、持ってる知識だけで見たほうがいいかなと思って、ノーガード戦法で鑑賞してきました。最速上映の1時間10分後の19時40分からの2D字幕版で鑑賞したんですが、映画館は満席で外国人の方も多く、お祭りの空気感が味わえて楽しかったです。自分が予習不十分なので楽しみきれませんでしたが、旧シリーズを見たくなる程度には楽しかったです。往年のファンにとっては感涙ものなんだろうなと思いました。上映後には拍手も起きていました。
映画館で一番沸いたのは「Chewie....We're Home.」という台詞とともにハン・ソロ演じるハリソン・フォードが登場するシーン。感嘆をもらすだけでなく、拍手するお客さんもいました。エピソード6の30年後の世界を描いている今作では、ハリソン・フォードのように旧シリーズのキャストがそのまま続投されていて、その登場シーンにお客さんが「おぉ!」ってなってたんですが、私はエピソード4~6は全く見ていないので「おばあちゃん?」「おじいちゃん?」「あんた誰?」という言葉が頭をよぎりました。(つーか、私、途中までハリソン・フォードのことルーク・スカイウォーカーだと勘違いしてました)しかし、スターウォーズの世界にとっては、私こそ「お前こそ誰だよ!」っていう感じなんだろうな。結婚して初めて相手家族の親戚の集まりに行った時とか、こういう気分になるんだろうな。相手に覚えがない時には自分が知られていないと思ったほうがいいなと謎の反省をしました。
ヒロインのレイは無名の人からキャスティングしたということですが、勇敢さと繊細さを兼ね備えた面持ちでよくもこんなイイコを探せるもんだな~とプロのお仕事に関心しました。フィンに手を握られて本気で嫌がってたレイが、だんだんと彼に心を許していくのが、ベタな演出だけど見てて楽しかったです。フィンは殺すのが嫌でストームトルーパーを脱走したのかと思いきや、脱走後は元仲間のストームトルーパーをがんがん殺すところが「そこに葛藤はないのか!」とちょっとつっこみたくなりました。あと、BB-8の丸だけで構成されるフォルムがめっちゃかわいかった。人間的なわけではないのに、あたたかみがあるロボットデザインが魅力的だな~と思いました。

2015年12月11日金曜日

007 スペクター

当惑のおもてなし

監督:サム・メンデス
原題:Spectre
上映時間:148分
パンフレット:720円(★★★☆☆:ダニエル・クレイグ版ジェームズ・ボンドや歴代スペクターの説明が掲載されていてためになります)

007シリーズは、前作「スカイフォール」を含めて合計2本しか見たことがなく、今回が3本目でした。冒頭のメキシコの「死者の日」のフェスティバルをバックにしたアクションからローマ・オーストラリア・モロッコ、そして彼のお膝元イギリスへとトムフォードを身にまとい世界を股にかけて活躍するジェームズ・ボンド。上唇は薄いのに下唇は厚いダニエル・グレイグの色気を感じつつ、楽しんで鑑賞することができました。でも、前作「スカイフォール」のほうが格段に面白かったな。「老い」と「死」を描いていた点において「スカイフォール」は特別に好きでした。今回の「スペクター」は、クリストフ・ヴァルツにはとどめをささず娘くらいの年に見えるレア・セドゥと手をつないで去るエンディングに、「若さ」とか「生」に惹かれるボンドを見た感じがします。
今回の映画で好きなシーンは、ローマでボンドが潜入したスペクターの集会の場面。椅子に座ってさまざまな決議を通していく幹部メンバーたちを2階から見守る構成員たち。目線の動きで「彼」が来たことが分かる感じとその「彼」がそのシーンでは後光で誰かが分からない気持ち悪さがデビィット・リンチみたいで好きでした。その後、死者の後釜選びのために、デイヴ・バウティスタが突然別ン後釜候補の目潰しするのもリンチっぽさを感じました。
あと、モロッコのスペクターの本拠地で、ボンドとマドレーヌが通された隔離された部屋に隕石が飾ってあり、それを見て2人がどう反応したらいいかわからず「感心しろってこと???」とこぼしたところが、あとからじわじわくる面白さだった。こういう、どう反応したらいいかわからないおもてなしってありますよね~

2015年12月4日金曜日

ガールズ&パンツァー 劇場版


戦車で自宅を破壊される幸福

監督:水島努
上映時間:119分
パンフレット:864円★★★★☆(登場する戦車や学校や登場人物の紹介がしっかり乗っていて、とても初見では消化しきれない情報量の多さ)

「ガールズ&パンツァー」、ムービーウォッチメンで課題映画に選ばれるまでは、作品の名前も知りませんでした。リスナー推薦の「和製マッド・マックス」という煽り文句とポスターイメージからなんとなく「「エンジェル・ウォーズ」みたいな話なのかな?」と思ってましたが、女子だけで戦うという意味では「エンジェル・ウォーズ」と似ていましたが、「エンジェル・ウォーズ」よりはもっと健康的に明るく狂ってる作品でした。女子高生たちが乗り込む戦車での人の死なない戦車による武道。とても明るい世界観で戦車という世界を楽しむことが出来るこの作品は、個人的にはとても新鮮で「日本のアニメ、やべぇ!」ってなりました。
冒頭3分間作品の簡単な紹介で「戦車道」に関する知識はある程度理解出来たのですが、テレビシリーズを一切みていないので、各登場人物のキャラクターや物語性はまったく分かりませんでした。でも、戦車道の世界がきっちり完成されているせいか、すごい楽しんで見ることができました。このよく分からないけど楽しいっていうのが、今年1月にチケットが余ったため急遽ハロプロのコンサートを連番することになった友達がライブが終わった後、メンバーの顔も名前も分からないのに「楽しい!最高!楽しい!最高!」ってその世界に圧倒されて一瞬のうちにファンになっていたことを思い出しました。この友人はこの感動を残すために、ブログ(激ヤバ鬼マスト帳)を開設までしてくれました。この「ガールズ&パンツァー」で、未知の世界に圧倒されるのってある種快感だなぁと再確認できました。
作中の戦車道、戦い始めは森林や野原みたいな所を中心に行われるんですが、後半になると街に繰り出して市街戦になっていくのが新鮮な絵で興奮しました。しかも、街を壊さないように戦うのではなく、バンバン破壊する景気のよさ!戦闘をライブビューイング的に観戦しているおじいちゃんが、自分の経営している旅館が破壊されて「やったーーー!」と喜んでいる様を見て、「あ~、楽しそうな世界!」って幸せな気持ちになりました。他のおじいちゃんたちも「お前ばっかり、せこい!」とすごいうらやましそうにしてたのもよかったです。