2015年4月23日木曜日

セッション


鬼コーチじゃないよ、鬼だよ

監督:デイミアン・チャゼル
上映時間:107分
原題:Whiplash
パンフレット:720円★★★☆☆(監督インタビューを読むと、自らの体験をベースにした映画だということがよく分かる)

WOWOWでアカデミー賞受賞式のまとめ番組みたいなのを見ていたので、助演男優賞を受賞しているこの作品も「すげー怖い先生の音楽映画」という情報くらいは知った状態で見にいきました。映画を見終わったあと、身体がこわばり大変な疲労感を感じました。この疲労感、最近だと「アメリカン・スナイパー」を見た時の感覚に似てました。この映画、まるで戦争映画のような緊張感がありました。
私は女性アイドルが好きなのですが、その特典映像とかドキュメンタリー映画とかでたまに見られる「アイドルがレッスンで先生にしごかれる」というシチュエーションが見ててハラハラし、そしてすごい好きだったりします。今年上映された「アイドルの涙 DOCUMENTARY of SKE48」での「牧野アンナ先生による「ピノキオ軍」のレッスンの際、松井怜奈が途中で倒れるも他のメンバーがまったく声をかけない」シーンとか、常軌を逸したがんばりにヒヤヒヤしつつ「やっぱり、常人の届かないところに手を伸ばす&伸ばさせる閉じた世界すげえ」と胸がドキドキして目が離せなくなります。この「セッション」もそういう異常なしごきと頑張りが見られて、個人的嗜好が満たされました。一番お気に入りのしごきシーンは1・2・3・4カウントでビンタを張って、テンポを取らせるところ。他人事だから「そりゃねぇわ」って笑い事のようにも思えるけど、これ我が身に振りかかってきたら映画の自殺エピソードよろしく鬱病になってしょうがないと思う。
ニーマンが学校を退学になりフレッチャー先生が先生を辞めた後、2人がジャズバーでばったり会いフレッチャーがチャーリー・パーカーのエピソードを語り、しごきも「至高のステージを目指すには、必要悪なのかも」と思わせたあとで、フレッチャーがニーマンを自分のバンドに誘い、そしていよいよ本番の演奏でフレッチャーが「学校にチクったのお前だろ!」と言ってニーマンに提示してたのとは違う曲を演奏するという、「鬼コーチが、たんなる鬼というか人非人」だったという真実が提示されるところに、くらくらきたしいままで見えてなかったものが見えた思いがしました。夢が叶うかもしれないという人参をぶら下げられることにより、師に妄信するのって危険。つーか、やっぱり何かを疑いなく妄信するのは危ない。しかし、妄信によって異常に頑張れるというのもまた事実。終盤のクライマックス、舞台の上でもってフレッチャーとニーマンの関係性がかわっていくところも面白かった。この後の2人の未来が明るいようには思えないけど、あの瞬間には2人の間に快感をもって通じ合うものがあったように感じました。