2015年5月6日水曜日

海にかかる霧

積荷であっても、女は乗せるな

監督:シム・ソンボ
原題:海霧 Haemoo
上映時間:111分
パンフレット:1000円★★★☆☆(600円の通常版でもよかったんだけど、豪華版しか在庫がなくこちらを購入。役者陣が方言の習得に努力したことがよく分かった)

ポン・ジュノ監督作品と思ってたんですが、鑑賞後パンフレット読んだらポン・ジュノは製作・脚本で、監督は「殺人の追憶」で脚本を担当したシム・ソンボだということ知り、すっかり勘違いしていたことに気が付きました。ポン・ジュノ監督作品だったとすると「スノー・ピアサー」がいまいちだったので「今回は本国で撮ってるしどうかな」とちょっとその出来に興味があったんですが・・・ポン・ジュノ、次は韓国で監督するのかなぁ。
「海にかかる霧」は、実話ベース×閉じた空間物と、自分にとってはかなり好みな要素が揃っていて、実際好みの映画でした。ただ、前半は描写がドライなのに対して、後半にメロドラマっぽいぺっとりした演出でそれが自分的には好みではなくちょっと残念でした。
前半の漁のシーンの、たんたんとしつつも働く喜びと船員のつながりを見せるところとか、陸に戻った後に分かる生活の困窮っぷりとか、ついつい説明的に描きがちな人物描写をさらっと距離をもった感じで描く感じはかなり好きでした。船長のキム・ユンスクが、自宅(兼居酒屋?)に帰宅したら、嫁がお金を取って男とSEXしているのに居合わせ、「すげ~怒るのかな?」とドキドキしてみてたら、たいして声もあらげず、嫁のほうが「あいつのSEXのが、あんたよりマシ!」とか声を荒げて天井から吊ってあるトイレットペーパーで股を拭き拭きするシーンは、中でもかなり好きですね。いろんなことをあきらめちゃってるキム・ユンスクの心情が伝わってきました。あとあと様々な事件が起きる中でも、他のことはどうでもいいけど船だけはあきらめられないんだなと、彼のことを理解出来たような気になれました。
船長のキム・ユンスクが「女を船に乗せるな!縁起が悪い」って数度にわたって言っているのですが、観客だけには機関室に女をいれたことによることがきっかけで不用意にそこにあるレバーが引かれたことが見せられていて、魚倉庫の移民が全員死んでしまったのもやっぱり女を船に乗せたからともいえるんじゃないかなと思わせられました。海の男のそういう験担ぎ、馬鹿に出来ないなと感じさせられました。
あと、船長に機関長が殺されたのを息を殺してみていた、パク・ユチョンとハン・イェリがその後SEXしたのも、「人間も生物として、生存の危機が訪れると子孫を残そうと自然と繁殖行為にむかうのかな」と思ったり。そういう通説みたいなのも、やっぱりその状態になると意外とあるものなのかなとやけにそのSEXを納得して見てしまったりしました。