2015年3月14日土曜日

シェフ 三ツ星フードトラック始めました

うまい料理には、さからえない

監督:ジョン・ファブロー
原題:Chef
上映時間:115分
パンフレット:★★☆☆☆(720円/映画内に出てくる料理のレシピがイラスト付で載っているけど、難しそうでやれる気がしない)

ジョン・ファブローがアイアンマンの監督を断ってまず一番に撮った映画と聞いていたので、「いったいどんな映画なのか!?」と期待して見にいきました。めちゃめちゃ心あたたまるハートフルストーリーで、逆に映画見終わった後に「アメリカン・スナイパー」とか「フォックス・キャッチャー」とか後味の悪そうな現在公開映画が見たくなった不思議。「他人の不幸で今日も飯がうまい」のではなく、「とにかくリアルに飯がうまそう」という、真の意味でのメシウマ映画でした。序盤から料理シーンがリズムカルで達者で、見ててめっちゃ料理したくなりました。私もあんなスピードでキュウリを切ってみたいです!タンタターン!
今回の映画、中盤の展開のネタバレ邦題サブタイトル「三ツ星フードトラック始めました」がついていたため、はじめから「いつ、フードトラック出てくるのかな?」という心持ちになってしまったのが残念でした。意外とそんなにすぐにはフードトラック出てこないから、このサブタイトルはやめてほしかったです。
はじめは雇われシェフ:ジョン・ファブローがオーナー:ダスティン・ホフマンや料理評論家:オリバー・プラットと対立してレストランをクビになったり、息子との仲がギクシャクしたりと障害がもうけられていたのですが、フードトラックが出てきてからはその掃除で息子とちょっと揉めたぐらいであとは障害なくうなぎのぼりにぐいぐいハッピーな展開で、逆に潔さを感じました。最後の元嫁との結婚エンディングとかうまくいきすぎて、もはやベタとも思えない展開です。

元嫁も息子も恋人も同僚も、はじめっからジョン・ファブローにやさしすぎすぎてちょっと不思議に思いました。なんで、みんなこんなに彼にやさしいのかなと考えたんですが、「彼の料理がうますぎて、みんな彼に胃袋を魅了されているんで逆らえないのかも」と思いました。そう思うと、映画に出てくる料理がもっとうまそうに見えてきます。しかし、同じ職場の恋仲のウエイターがスカーレット・ヨハンソンな時点で、これは負け犬の話ではなく何かを持ってる人の話であり、その持っているものをどう生かすのかという話なんだなと思いました。
雇われ監督としてビッグバジェット映画を成功させたジョン・ファブローが、インデペンデントではじめに撮った映画が、コレだったっていうのも興味深かったです。あと、軽く描かれているけどネットリテラシーが低い中年のおっさんがSNSを炎上させるという描写もすごい説得力あっておもしろかった。インターネットネイティブ世代の息子のつっこみ、「DMはフォロワーにしか送信できないんだよ」は金言。そして、炎上はチャンスというのも一理あるんだなと素直に理解させてくれる映画でもありました。

2015年3月5日木曜日

幕が上がる

監督:本広克行
上映時間:119分
パンフレット:★★★★★(1080円/「高い!」って思ったけど、映画の世界界を補完する資料やインタビューがはいってていいパンフレット。ももクロメンバーがリレー式に書いた直筆の手紙画像もついてます)

どこまでもいっても、いつまでたっても、彼女たちは全力少女

「幕が上がる」、出来れば見るのを避けたかった映画でした。
というのも、私、3~4年前にこの映画の主演を務める ももいろクローバーがものすごい好きだったんです。ですが、いまはすっかり興味がなくなってしまってまして。一時期強烈に好きだったものに興味がなくなると、その対象物を見るたびに恥ずかしいような後ろめたいような気持ちになることってありませんか。(これ、私だけかな?)今の私にとって、ももいろクローバーがそれです。
2010年10月に名古屋にライブに来たももいろクローバーに心を奪われ、次の年の2011年には早見あかり卒業コンサート、極楽門と遠征してライブを見に行きました。が、その年の12月のさいたまスーパーアリーナの演出の趣味に合わなさに彼女たちから徐々に心が離れていきました。とはいえ、2012年12月の紅白くらいまではテレビやネットで彼女たちの情報は追っていましたが、最近は心離れした自分の薄情さと熱くはまっていた過去の自分への気恥ずかしさから、なるべく見ないようにしてきました。
ですが、今回ムービーウォッチメンの課題作品になったということで、自分のつまらない自我には目を瞑って、ひさびさにももいろクローバーと2時間向き合わさせていただきました。
何事にも全力でぶつかっていくももいろクローバー、売れた今現在もその全力感が色あせてなくてすごいなぁとあらためて感動しました。ももドラの時とはうってかわって、演技がものすごいうまかった。パンフレットによると、全員台本を丸暗記して現場にきていて、現場では台本をまったく開かなかったとか。。。なんすか、このがんばり。既に売れてるのに、もう大人といえる年齢なのにいまだに全力少女な彼女たち、、、頭がさがります。
で、映画の感想ですが、高校演劇に興味が沸く青春群像劇の快作だと思います。高校演劇の大会が特殊な日程であることや、当日準備の緊張感、演出家の仕事の悩みや楽しさが伝わってきました。もう参加資格はないけど高校演劇やってみたくなったし、見に行きたくなりました。
主人公のさお演じる百田夏菜子が、ももいろクローバーの各メンバーと2人きりになるシーンがよかったです。特に有安杏果とのシーンがよかった。なんというか、有安杏果が人の顔色を伺う表情って、見てるこっちもちょっと不安になるしスクリーン映えします。玉井詩織とひとつのベッドで寝るシーンも、さすが一緒に寝慣れてるというか不自然じゃないドキドキ感があってよかったです。
ただ、この映画、ファンサービスのつもりなのかよかれと思っていれているっぽい演出が、薄ら寒いのが残念でした。職員室のシーンになると必ず出てくるももクロのグッズを持ったフジテレビアナウンサー、彼女たちの保護者役を務めるももクロ関連の豪華キャスト、役のイメージとはあわない百田夏菜子的誤字と、映画のストーリーが頭にはいってきずらくなるノイズがもったいなかったなぁ。
あと、多用される百田夏菜子のモノローグも、彼女自身がちゃんと演技できていたのであんなにつけなくてもよかったと思います。もっと自由に彼女たちの演技を楽しみたかったです。
でも、余計なことして、ちょっとお客さんをしらけさせる演出をいれちゃうのは、ももいろクローバー周辺のおじさんたちの悪い癖なのかもネ。(彼女たちへの愛ゆえの”よかれ”演出なんだと思いますが・・・)

2015年2月28日土曜日

2015年2月に見たいくつかの映画

2月はブログに感想を書いた映画4本以外に、新作映画4本「激戦」「さらば 愛の言葉よ」「すいっちん バイブ新世紀」「アイドルの涙 DOCUMENTARY of SKE48」を見ました。(合計8本鑑賞)

読書会のイベントでラップをしたり、ピケティ「21世紀の資本」を読んだり、急遽「なんとなくクリスタル」のイベントのために東京に行ったり、と自分の中ではわりと忙しかったわりには、たくさん映画見てたんだなぁ。

「激戦 ハート・オブ・ファイト」は、知人のおすすめツイートを見て鑑賞。面白い映画でしたが、自分は知人ほどにテンションが高まらず、映画中にその知人のことが頭にちらつきました。「人にモノをすすめるのって難しいなぁ」とか、映画とは関係ないことが感想として残りました。子供に足を踏んでもらう終盤のシーンが美しかったです。私的には、こっちよりも「100円の恋」のが好みかな。

「さらば 愛の言葉よ」は、東京に行った時に「せっかくだから3Dで見たい!」と鑑賞。
「子猫物語」ばりの犬映画でビックリした。奇遇にも、その日東京で参加したイベントの課題本「33年後のなんとなく、クリスタル」も冒頭に犬が語る本でした。
「想像力のないものはリアリティに逃げる」というゴダールと、「ノスタルジィを求めた読者にリアリティを突きつける」田中康夫。その両者の作品に、「犬」という妙な共通点を見つけて、ちょっとうれしかった。

「すいっちん バイブ新生期」は、「バイブのドキュメンタリーってどんなだろう?」って興味が沸いて、大須のシアターカフェで鑑賞。
「黒いバイブが好きだ!」と語る名古屋の老舗バイブメーカー経営者の熱がすごかった。男は黒くて大きいバイブを望み、女はソフトでかわいいバイブを望むっていう男女間の性への思いの違いが見れて面白かったです。大怪我をした時、女は家族・知人の安否を一番心配するが、男は自分のムスコの確認を一番にするっていう逸話をなぜか思い出しました。

「アイドルの涙 DOCUMENTARY of SKE48」は、ヲタ友でつどい5人で見にいきました。友達と行ったのに、すごい泣いてしまった。
卒業メンバーのインタビューと当時の映像を見て、「私は桑原みずきがいたころのSKEが好きなんだな」と思った。「私が好きだったSKEはもうないんだ。。。あのガイシホールでとっくに終わってたんだ」って、実感。「あの頃のSKEが今もあるなら、まだSKEを好きだと思うけど、もうそれはないんだ」って、この映画で確認してしまいました。ヲタとしては、非常に薄情な自分にも気付きました。


激戦 ハート・オブ・ファイト
監督:ダンテ・ラム
原題:激戦 Unbeatable
上映時間:116分
弟子がダメなら、オレがやるしか


さらば、愛の言葉よ
監督:ジャン=リュック・ゴダール
原題:Adieu au langage 3D
上映時間:69分
飛び出すワンワン大冒険


すいっちん バイブ新世紀
監督:笹谷遼平
上映時間:61分
元気な地元のバイブメーカーの誇り


アイドルの涙 DOCUMENTARY of SKE48
監督:石原真
上映時間:116分
ごめん、この先は、ともに泣けない

味園ユニバース

私は誰?今はいつ?

監督:山下敦弘
上映時間:103分
パンフレット:★★★★☆(720円/舞台となったカスミの家のレイアウトやポチ男ノートの抜粋等細かい設定資料がのってます。監督と彼との対談で、渋谷すばるの歌が中心にすえられた映画であることがよく分かります)

山下敦弘監督は「苦役列車」「もらとりあむタマ子」と好きな作品が続いていたし、味園ユニバースも先日そこで行われたアイドルグループEspeciaのリリースパーティイベントの様子をSNSで見てすごい興味が沸いていたので、この作品もかなり期待して見にいきました。
しかし、あることが気になってあまり楽しめなかったです。そのあることとは、「いったい「いつ」が舞台の映画なのか」ということ。この映画、主人公を演じる渋谷すばるが刑務所を出所するシーンからはじまるのですが、彼を迎えに来る昔のツレ、そして記憶喪失になった彼を囲むライブ打ち上げ中のバンド赤犬メンバーと、序盤、携帯を使うシーンがまったくないのです。「不特定多数の人がだべるシーンで携帯がないのは不自然だし、これは20年以上前の話なんだろうな~」と思ってみてました。途中、カラオケシーンでスピッツ「チェリー」が歌われたので、「つーことは1990年代後半なのかな?」と思ってたら、映画が1時間以上経過してから、カレンダーを指して「あれから2年たつけど、時が止まったまま…」とかいうくだりで明確に時が判明。って、カレンダー2012年だから、2014年舞台の映画じゃないかよ!それ、去年のことだよ。。。
映画後半になって、ちょこちょこガラケーは出てくるんですけど、スマホ所有者ゼロの2014年。。。おそらく、味園周辺のレトロな雰囲気を守るために、現代的ガジェットの絵は控えたんでしょうが、そんなんなら、後半になって急に日時を明確に述べるのはやめたらよかったのに。カレンダーで示された今現在感が薄いことがノイズになって、「なんかこの映画、変!居心地悪い!」っていう気持ちがとまんなかったです。2014年の話だったら、渋谷すばるがマイクを奪って「古い日記」を熱唱した時点で観客がスマホで撮影して、SNSで拡散の世の中だと思う。とにかく、あれは2014年じゃなかった。なぜ、2014年ということにしたのか謎でならない。1997年くらいの話ならまだ納得できるのだけど。最後、ヒロイン役の二階堂ふみの「しょうもなっ!」っていう言葉で映画が締められるのですが、居心地の悪さに私もエンドロール後「しょうもなっ!」って声に出してつぶやいてしまいました。(感想書き終わった後、予告編見たら、予告編冒頭で”2014年大阪”って出てきてた。。。本編でもそれ出してほしかったわ)
各シーンの絵は非常に美しい映画だけに、小さなことにひっかかってしまったのが残念でした。役者さんの演技も、生ライブシーンの迫力も、あたたかい食事シーンも、とてもよかったと思います。記憶喪失の男が、アルツハイマーの老人と共同生活をするとか、自分の息子に会いに行ったら自分が父親であることが忘れられているとか、さまざまな記憶に関する欠損が描かれていることとかも興味深かったです。最後、記憶を取り戻した渋谷すばるがステージで歌うシーンは、「腐ったような過去や自分しかいなくても、やれる!」というメッセージも受け取れました。

2015年2月18日水曜日

ミュータント・タートルズ

正義も悪も、馬鹿ばっか

監督:ジョナサン・リーベスマン
原題:Teenage Mutant Ninja Turtles
上映時間:101分
パンフレット:★★★★☆(720円/各キャラの設定資料とかいままでのシリーズの説明とか充実してる。なぜかスプリンターの画像だけ画素数が粗いのが気になる)

ミュータント・タートルズは、アニメも旧劇場版も未見で「亀が愉快な感じのやつ」というざっくりとしたイメージしかもってませんでした。実際見てみると、想像以上に愉快な亀たちでした。ヒーローものという楽しさ以上に、地上のポップカルチャーにあこがれるニューヨークの愉快なティーネージブラザーものとして面白かったです。
この映画、なにが楽しかったって、正義も悪も馬鹿しかいないということ。「こんな馬鹿たちに、脅かされたり守られてたりするニューヨーク、大丈夫かよ!?」ってつっこみたくなりました。正義も悪も過去でつながっていることは分かったけど、“毒を巻く→ミュータジェン(血液)で解毒”っていう作戦は金が儲かる以外の目的はあったのだろうか。。。でも、逆に深いこと考える必要を感じないところに、「イイネ!」ってなりました。
あと、雪山を滑り降りるアクションシーンがすごい楽しかった!複数の車が雪山を転げ落ちる中で無茶なアクションを繰り出す...この爽快感に「ローンレンジャー」の機関車アクションを思い出しました。しかも、150分もあるローンレンジャーと違って映画が101分しかなく、しかも終盤でなく物語の中盤でこんな楽しいシーンがあって「めっちゃ、儲かった!」って気分になりました。
ちょっと残念だったのは、ただでさえ人数の少ない人間の主要キャストにいまいち魅力を感じなかったところ。ヒロイン役のエイプリル:ミーガン・フォックスに、もうちょっとキュートさがほしかったなぁ。個人的希望としては、エマ・ストーンにやってほしかったです。あと、ヴァーン:ウィル・アーネットはあんなにおじさんでよかったのだろうか。エイプリルとの年の差(実際の俳優の年齢差は16歳)が気になって、2人が仕事仲間以上恋愛未満の関係ではなく、ただの親子に見えました。

2015年2月14日土曜日

ANNIE アニー

照れたミュージカルって、しらける

監督:ウィル・グラック
原題:Annie
上映時間:118分
パンフレット:★★★☆☆(720円/キャストのインタビューがたくさんはいってて読みごたえがある。キャメロンディアスの歌が上手いかどうかは評価が分かれるところ)

いままでミュージカルのアニーも見たことなかったのですが、「孤児の赤毛の少女が、トゥモロートゥモローと歌う話」というぼんやりとした印象を持ってました。実際に映画を見てみたら、ほとんどそのままのあらすじでビックリ。ただ、アニーは2人いると思いこんでたけど、実際はひとりだった。(ちょっとググったら、ミュージカルのヤツは子役を働かせすぎないようにわざとダブルキャストにしてるらしい)
で、映画版ですけど・・・曲がいいのは認めます。そりゃあ、ミュージカル映画ですから。ですが、ミュージカルシーンやミュージカルに遷移するシーンに限らず、通常のシーンでも不自然な会話が多くて、なんか話が頭にはいってきずらかった。ストーリーラインが単純だから、話は理解は出来るけど、なんでアニー(クワベンジャネ・ウォレス)がウィル(ジェイミー・フォックス)やグレー(ローズ・バーン)と打ち解けたかいまいちピンときませんでした。一番違和感を感じた会話は、アニーとグレースのはじめての会話。「ラジオがどうのこうの」とか「友達がいるだかいないだか」グレースが言ってるけど、こいつが何をいいたいか全く理解出来なかった。でも、絵面だけみてたら、ほぼすぐに意気投合してて「えっ!今の会話でなにがおきた!」ってなりました。
あと、作り手側がミュージカルに関して照れがあるのかいまいち信じきれていないのか、ちょっとミュージカルに対するエクスキューズめいたシーンがあるのが、残念でした。せっかくやるなら、もっとやりきってほしかった。ハニガン(キャメロン・ディアス)がアニーの親オーディションをするシーンで、「なんで、歌と踊りがいるんだ?」と聞かれ、「だって、みんな好きじゃない!それがあれば、盛り上がれるし」的なことを言うのは、ミュージカルを信じきれてない照れを感じました。(そのシーンに限らず、キャメロン・ディアスはミュージカルをメタ視点化するような台詞が多かった)同監督作品の「ステイ・フレンズ」では、ラストシーンのフラッシュモブでむかえる大団円があり、あれを見ているとウィル・グラック監督は歌や踊りの力を信じてる人な気がするのですが、直球でミュージカル映画をするというとちょっと照れてしまうのかなと感じました。
いま、トマ・ピケティの「21世紀の資本」って本を読んでいるのですが、それによると現代ではもともと貧乏な人が才能で超金持ちになるというアメリカンドリームを叶えるのは相当難しいという資本格差を超える難しさが書いてあり、ウィルが貧乏の出目でありながら、携帯会社で成功し旧ワールドトレードセンター跡地にある高層マンションに住んでいるという設定に説得力を感じられませんでした。そもそも、貧乏の出目なのに、あんなに潔癖症でハッシュポテトも食べれないってなんでなんだろ。あと、ハゲ設定はなんの伏線にもなってないし、完全に蛇足だと思う。ついでに言うと、あのスマートハウスの壁面液晶の映像は超ださいから、住みたくない。

2015年2月7日土曜日

薄氷の殺人

馬に、スイカに、わけわかんないけど好きでいっぱい

監督:ディアオ・イーナン
原題:白日烟火 Black Coal, Thin Ice
上映時間:106分
パンフレット:★★★☆☆(700円/出資者の要望でフィルムノワールものにしたものの、カット数とか撮影季節とかの出資者要望はことごとくはねのけているイーナン監督インタビューに漢気を感じた)

好きなシーンがいっぱいで、ずっと見ていたくなる映画でした。好きだけど、うまく言葉で説明できないたぐいの好きで、ディアオ・イーナン監督、この名前はおぼえておかなきゃなと思いました。
のちのちのなんの伏線にもなっていない唐突な絵(代表例:突如あらわれるアパートの1階で住人が飼っている馬)が、ぎりぎりあざとさを感じないレベルのくすぐり演出で、目や心に気持ちよかったです。特に好きなのは、序盤の殺人で、なぜか警察がスイカを食べながら捜査会議をしているシーン。捜査に使っている地図とかに、スイカの汁がおちまくってて、「え、なんでスイカ食べてる!?スイカ邪魔じゃ・・・」って気になるけど、いっさいその説明はない。そんな「なんで」を説明しないところが、なんだか気持ちよかったです。
ラストで打ち上がる白昼の花火、その花火を見上げるヒロインのウーの泣き顔とも笑顔ともつかない表情に、去年の「そこのみにて光り輝く」のラストシーンの池脇千鶴の表情を思い出しました。どちらのヒロインも状況だけみたら救われたとは言い難く映画のはじまりよりもどん底に落ちているように見える。でも、彼女たちの心はこのストーリーの中でどこか救われていることを感じさせらる。この花火のシーンはカメラがぐーっとせりあがって、花火を見る人の顔と花火がワンカットで撮られているのも美しかった。悲惨さも美しさも救済も転落もひとつの世界にあるという、すべてが映っているという感じがしました。
ちなみに、終盤で主人公ジャンが社交ダンスの練習場でラテンの曲をかけて踊り狂うシーンがありますが、社交ダンス経験10年の私から見ても、そのバックでタンゴの団体レッスンをしてる方々のダンスはけっこううまかったです。立ち姿もホールド(男性と女性の手の組手)もすっとしてて、ステップもピッとしてました。ジャンの踊りは型破りでしたが。だが、その対比がまたよかった。あと、サウナや氷で人の足元がすべるシーンがやたら多いのも好きだったな。