2014年7月19日土曜日

her 世界でひとつの彼女(126分)


監督:スパイク・ジョーンズ
原題:Her
キスの途中に言わなくてもいいこと

スパイク・ジョーンズ監督作品全然見たことないと思っていたのですが、確認してみたら「マルコビッチの穴」「アダプテーション」を見ていました。この2本は展開に「ギョッ!」とした覚えがあり、面白かった記憶があります。あ、今回の「her」で一番「ギョッ!」としたのはチャットセックスの「猫の死骸で首を絞めて!」という女性エピソードですね。猫の死骸で首を絞められたい性癖って、初めてきいたわ。意外な性癖に、サーっと冷める主人公:セオドアの表情がなんとも言えませんでした。(でも、イったふりしてた)人間の欲って、多種多様だなぁ。
この映画、OSとの恋愛の経緯よりも、ほぼ現在の空気のちょっとだけ未来に背伸びをした世界の描写に興味がそそられました。主人公:セオドアの職業・手紙代筆業っていうのが、さもありそうで面白かった。ひとりひとりが声で手紙を綴り、そしてそれを手書き仕様にうちだして、そしてポストに投函する。ポスト投函前に、「ピッ!」っと読み込むところとかが、本当にそういう仕事が存在している感じがしていてよかった。セオドアは過去新聞でコラムを書いていたこととか匂わしていたし、文才のある方々がライスワークとしてこういう仕事に付く日もくるのかもしれません。 
切なさというか痛さという意味で一番印象に残ったのは、セオドアが友達に紹介された女性とデートするエピソード。初対面同士の2人でひとしきりテンション高くしゃべり、酒を飲み、そのまま路上で抱き合いキスする。が、キスの途中「舌はいれないで」と彼女に言われて、ちょっと「?」と頭によぎりつつもそのままキスを続けてたものの、「あなた、やり逃げしないわよね!」「私もいい年だから結婚したいの」的なことを言われて、すっかり萎えて「ごめん」と言うとデートの相手にものすごいなじられて逃げ帰るセオドア。 その後、OS:サマンサに、このことで傷ついた自分の心情を「誰かにいい人間に見られたかったんだ」「誰かとSEXしたかったんだ」「心の穴が埋まる気がしたんだ」と語るところが男にもそういう心情があるんだなとあまり触れない男性の意外な心理を垣間見たようでした。と。あと、相手のことをあんまり好きじゃないっていうのもあるのかもしれませんが、あんな美人でも男に軽く見られたり遊ばれるのが嫌でああいう言わんでもいいこといっちゃうのかと思うと、自分はそうとう言わんでいいこと言って空回りしてる気がして怖くなりました。