2013年5月18日土曜日

海と大陸(93分)

監督:エマヌエーレ・クリアレーゼ
原題:Terraferma
「生きること」「手をさしのべること」

義兄にもらった無料鑑賞券で見てきました。
私は「猫町倶楽部」という読書会サークルに参加しているのですが、ちょうど次の課題本「潮騒」(三島由紀夫)がこの映画と共通点が多く、両作品をより面白く楽しめました。

「海と大陸」「潮騒」の共通点は、大きく3つ。
 ・島が舞台(歌島とノーサ島)
 ・主人公は大人一歩手前の青年で、職業は漁師
 ・主人公は母子家庭で育つ 

ただ、「潮騒」は漁師としてやっていけば一生職業をまっとうできる世界だったのですが、この映画「海と大陸」では漁師という職業を続けていくのが難しい現代の世界。
島で漁師を続ける者は少なく、廃船し廃業手当をもらう者も多い。若い世代は、観光客向けに酒屋で働いたり家を宿として貸したりして暮らしている。
国は違えど、そういう時代の移り変わりをを通じて感じることが出来、興味深かったです。
主人公フィリッポとその祖父の漁中に難民が流れ着き、おぼれていた数人の難民を救い、そのうちの難民の妊婦を家でかくまうのですが、その救出のせいでもともと貧しかったフィリッポ家族の生活がより困窮していきます。フィリッポはふたたび難民と海で遭遇するのですが、次はおぼれる難民に手をさしのべるどころか、彼らを叩いて追い払うようになってしまっている。彼の変化に、「自分が生きること」と「誰かに手をさしのべること」が時には対立してしまうことを痛感しました。