2013年5月31日金曜日

藁の盾(124分)

監督:三池崇史
自分を守る物語のために

「幼女殺人犯に、被害者の祖父が新聞全面広告にて10億円の殺人依頼をする」という大掛かりな設定なわりに、鑑賞後わりと全体的にこじんまりとした印象を持ちました。三池監督のエロいやがらせ演出をいつも楽しみにしているのですが、今回はそういう演出もなく個人的にはさみしかったです。 
「こんなヤツ、守る必要あるのか!?」という清丸国秀を守る側の葛藤を一番感じたのは、永山絢斗の殉職シーン。仕事を真面目にまっとうした為に電車内で銃撃をうけ、残された母親を心配しながら死に至る。一番若く、清丸に対し敵対心を隠していなかった彼が、後悔の中死んでいく姿にはすごい空しさを感じました。
電車内のシーンは役者陣のアップが多く、彼らの目が充血しまくってるのが確認できてよかったです。表情を超えて、身体に現れる疲れや迷いが伝わってきました。 
クライマックス、「妻はそんなこと言ってない!俺が作った物語だよ!」とキレながら、銃を清丸(藤原竜也)の口につっこむ大沢たかお。そして、数秒ブラックアウトする画面。
その瞬間、「あー、こりゃ殺っちまったな」と思いましたが、どっこい殺していない。これには大沢たかお側の狂気を感じました。自分でも今の自分が妻の言葉で支えられているのではないと認めてしまっているのに。。。人は自分の物語を守るためなら、わりとなんだってしてしまうんだなと怖くなりました。
あと、藤原竜也が松嶋奈々子を突発的に殺したのが「だって、その人おばさん臭いんだもん!」という驚愕の理由だったのにも怖くなりました。

2013年5月24日金曜日

クロユリ団地(106分)

監督:中田秀夫
あっちゃんの顔がコワイ!

今回脚本を担当されているタマフルでお馴染みの三宅隆さんの過去作品は監督・脚本の映画「七つまでは神のうち」しか見ていませんが、途中まで観客をミスリードさせるのが三宅さんらしいストーリーテリングなのかなと感じました。
今回の映画では、あっちゃんの家族にまつわる事柄について観客は違和感を感じながらも実在する家族として勘違いさせられます。途中で、真実が見えてきて「アレ?アレ?」と思い巡らせるせいか、鑑賞後長い余韻が残りました。「七つまでは神のうち」でも、同じように途中まで騙されていたからこそ感じた長い余韻があったことをおぼえています。 
今回の映画、あっちゃんがよかった!
まず、なんと言っても、顔が怖い。そして、AKBに所属時にも醸していた「所在ない感じなのに、中心にいる奇妙な存在感」にキラキラしたものに目がいくのとは違う吸引力がありますね。「苦役列車」もヒロイン役もよかったし、やっぱりこの人は稀有な存在感がある人だなぁと思いました。女優あっちゃん、これからも楽しみにしています。

2013年5月19日日曜日

ヒステリア(100分)

監督:ターニャ・ウェクスラー
原題:Hysteria
親とバイブの話はしたくない

またまた義兄からもらった無料鑑賞券で、母と一緒に見てきました。
鑑賞券の有効期限が5月いっぱいだったので、対象の映画館で公開している中から興味が持てるのを選びました。映画自体はけっこう面白かったのですが、親と一緒に見るのが気まずいヤツでした。
19世紀イギリスで発明された電動バイブレーターの誕生秘話を描いた本作品。
もともと女性の自慰の話はあまりしないので、映画中親とこれを見て後でどんな話したらいいのかとこの映画を選んだことを後悔。映画鑑賞後、母が一言「おもしろかったね!」と言ってくれたので、相槌をうってそれ以上深い話はしないでおきましたよ。親と一緒に見る映画は、もっとセレクションを気をつけねば!
女性特有の病気とされていた“ヒステリー”の治療のために、電動バイブレーターが発明されたという事実、今回初めて知りました。映画では、電動バイブレーターの誕生秘話と登場人物のラブストーリー・社会的権利を得ていく女性の姿がうまく絡み合っていて面白かったです。
主人公の医師モーティマー・ダランビルはヒステリー症状の治療のために女性患者の陰部へオイルマッサージを行うのですが、連日のマッサージのせいで利き手が痙攣し、トングがもてなくなったり、ボールにぎにぎしたり、氷で冷やしたりしてたのがおかしかった。そりゃ、患者ごとに1時間もマッサージしてたら、痙攣もしますって!それを機械化したことで、女性が自分自身で出来・かつ5分で女性が満足が得られるようになったのは、すごいことです。
そして、20世紀には医学書から“ヒステリー”の文字が消えたっていうんだから、、、バイブレーター侮りがたし!エンドロールで創生から原題までのバイブレーターが紹介されるのもよかったです。

2013年5月18日土曜日

海と大陸(93分)

監督:エマヌエーレ・クリアレーゼ
原題:Terraferma
「生きること」「手をさしのべること」

義兄にもらった無料鑑賞券で見てきました。
私は「猫町倶楽部」という読書会サークルに参加しているのですが、ちょうど次の課題本「潮騒」(三島由紀夫)がこの映画と共通点が多く、両作品をより面白く楽しめました。

「海と大陸」「潮騒」の共通点は、大きく3つ。
 ・島が舞台(歌島とノーサ島)
 ・主人公は大人一歩手前の青年で、職業は漁師
 ・主人公は母子家庭で育つ 

ただ、「潮騒」は漁師としてやっていけば一生職業をまっとうできる世界だったのですが、この映画「海と大陸」では漁師という職業を続けていくのが難しい現代の世界。
島で漁師を続ける者は少なく、廃船し廃業手当をもらう者も多い。若い世代は、観光客向けに酒屋で働いたり家を宿として貸したりして暮らしている。
国は違えど、そういう時代の移り変わりをを通じて感じることが出来、興味深かったです。
主人公フィリッポとその祖父の漁中に難民が流れ着き、おぼれていた数人の難民を救い、そのうちの難民の妊婦を家でかくまうのですが、その救出のせいでもともと貧しかったフィリッポ家族の生活がより困窮していきます。フィリッポはふたたび難民と海で遭遇するのですが、次はおぼれる難民に手をさしのべるどころか、彼らを叩いて追い払うようになってしまっている。彼の変化に、「自分が生きること」と「誰かに手をさしのべること」が時には対立してしまうことを痛感しました。 



2013年5月12日日曜日

ホーリー・モーターズ(115分)

監督:レオス・カラックス
原題:Holy Motors
アポイントメントの向こう側

シネマテーブルで課題作品になったということで、レオン・カラックスの映画今回初めて見てきました。序盤は「コレ、なんの話!?」と探り探りに見てましたが、最後まで説明過多になることなく「結局、なんの話!?」とつきすすむこの映画、わりと楽しめました。 
出勤し乗り込んだリムジンで運転手セリーヌに今日のアポ渡され、行く先々でそのアポどおりの役割を演じる主人公オスカー。
はじめは「探偵なのかな?」と思ったけど、墓場で奇人を演じるあたりから「別に探偵でもなんでもねー」と悟りました。大富豪の臨終を演じたのち「じゃ、そろそろ次のアポがあるから」とベッドの脇の姪っ子に断ると、「あ、私も次があるの」と返されるところで「あ、オスカーだけがこの仕事してるんじゃないんだ」と一段階この世界の狭まるのを感じました。そして、最後に嫁と子供が猿だったところで「何の何!?」的な気持ちに。全体を通じ「みんな、その時々にその役割を演じてるだけなんだよ。うちら、それを楽しんでるんだよ。」的なメッセージが受け取れなくはないけど、まあどんなメッセージが込められていようがどうでもいいやという気持ちになりました。 
うまく言えないんですけど、最後までスッキリしない星新一の短編小説という印象を受けましたネ。(星新一さんのは最後にスッキリさせられます)(嫌な気分になるスッキリの時もあるけど)

2013年5月11日土曜日

アイアンマン3(131分)

監督:シェーン・ブラック
原題:Iron Man 3
4DXは面白い映画だけにします

日本初上陸の4DXで見てきました。中川コロナに日本初のモノが降臨するなんてビックリ。私が見た回には、愛知県知事も鑑賞に来ていました。しばらくは、コレ目当てに中川が賑わうかもしれませんね。
まず映画の前に初めての4DXについて風やら水やら匂いやら霧やらスゲーでゲス。予想以上に映画のシーンにちゃんとマッチして各種効果が出て、楽しい。
特に効果を感じたのは、トニースタークの家が破壊されるシーン。シートはぐいぐい動くし、風は吹くし、水は飛び散るし、家が崩れ落ちるところでスクリーン前にスモークが出てくるし。
あと、飛行機から次々に手をつないで乗客を助けるシーンも、シートと風の効果ですごいスリルを感じました。
ただ、この4DXすごい疲れます。鑑賞後、乗り物酔いみたいな倦怠感があるし、頻繁には見に行けない感じです。今回の「アイアンマン 3」は映画自体が面白かったからよかったけど、つまんない映画でこんなに疲れたら許しがたいものが。ので、ちゃんと映画を選んだ上での4DX鑑賞をオススメします。
で、「アイアンマン 3」の映画自体ですが、登場人物ひとりひとりに愛が注がれていてよかったです。オープニングで新年の花火をたった1人で見ていたキリアンと、エンディングでポッツと一緒にアイアンマンスーツ爆発させた花火を見るトニースターク。孤独の中で野望を燃やすキリアンと、愛の前に自らの愛好するものを焼失させるトニースターク、この対比がキレイにはまっててよかった。
エンドロール後のお楽しみも今までのマーベルの中で一番笑いました。短気ゆえに人の話をきけないハルクかわゆす。
ただ、今回の悪役キリアンは、ポッツのことがどれだけ好きなのか、結局何をしたいのかがよく分からず、悪役側への感情移入がいまいち出来ず残念でした。スタークへの復讐心という動機は理解出来るんですが。ポッツが火の海に落ちても、「オレなら手を離さなかったよ」っていう台詞ってのはどうかと思う。もっと、ポッツを奪いあって!

セデック・バレ(1部:144分 2部:132分)

監督:ウェイ・ダーション
原題:Warriors of the Rainbow I : Sun Flag
Warriors of the Rainbow II: Rainbow Bridge
アジア・近代版 スリーハンドレッド

12部ぶっ続けで4時間36分みてきました。
ついこないだ社員旅行で台湾に行ったばかりなのですが、日本と台湾の間にこんな歴史があったとは知らなかった。戦争の中で死んでいく日本人はこれまで映画の中でたくさん見てきましたが、侵略者としての日本人がこんなに大勢殺される映画は初めて見ました。
日本は第二次世界大戦敗戦で締めくくっていることもあり、私自身戦争加害者としての意識が薄かったりしますが、ちゃんと自分の国の歴史は知っておかないといけないなとちょっと反省しました。 

虹を信仰するセデック族に圧倒されました。
つい100年前台湾にこういう原住民族がいたなんてビックリです。出草という生首狩りでテリトリー争いし、大人と認められると顔に刺青をいれるセデック族。
彼らがたった300人で日本軍に立ち向かう姿は、アジア・近代版スリーハンドレッドと言っていいでしょう。日本軍が使う飛行機やミサイルに勝てるはずないのに、彼らが銃を持って森を駆け回る姿には無敵感がビンビン漂っていました。ことあるごとに見せる踊りや杯を2人一緒に交わす酒の飲みっぷりもよかったです。

映画終盤に露社頭目モーナ・ルダオが妻に会った際、「顔をちゃんと拭け!」と言ったのに失礼ながら笑ってしまいました。だって、妻の顔には青ヒゲと見違えるばかりの立派な刺青が「え、いまさらそんなこと言うの!?」って思っちゃいました。けど、あれは儀式的なヤツだったんですね。その土地の文化を知らないと失礼やらかしちゃうから気をつけなければ。郷にいらずんば、郷に従え。

2013年5月3日金曜日

ラストスタンド(105分)

監督:キム・ジウン
原題:The Last Stand
趣味に生き、イイ顔しろ

キム・ジウン監督「悪魔を見た」を2011年年間ベスト映画にしていたこともあり、同監督の最新作「ラスト・スタンド」も楽しみにしてました。
「こういうエッセンスのある映画、やっぱ好きだ!」と、今回自分の好みを再確認出来ました。
まず、冒頭、路上車中休憩を取る警官の何気ないシーンになぜかすごい不穏な空気がかもし出されているところが好き。高速でスーパーカーが通り抜けていく前からなんか変な空気感があり、「「悪魔を見た」よろしくこの警官も惨殺されるんじゃなかろうか!?」とへんな期待をしちゃいました。(実際は夜食食べてるだけですが。)

あと、「頭のおかしいフリークス最強!」っていうエピソードが出てくるところが、めちゃくちゃ好きです。「悪魔を見た」では殺人を共通の趣味にする趣味友が出てくるのですが、今回は世界大戦中の武器マニアが出てきます。こいつ昼から仕事が暇な副保安官と豚肉を銃で撃ったりとしょうもない生活をしてるんですが、最後の対決では収集していた武器が役に立つしマシンガンをぶっ放すシュワちゃんの隣でイイ顔してバトルに華を添えるんですよね。やっぱ、こういういかれたフリークス、大好物です。
シュワちゃんはかって凄腕の麻薬捜査官だったという過去があるのですが、出来ればただの田舎者保安官という設定にしてほしかったですね。過去の職歴でその強さの理由を説明されるより、「田舎者なめんな!移民の顔を汚すな!」という思いから理由なく彼は強いというほうがより国境付近のあの町に住むシュワちゃんにもっと萌えれた気がします。