2015年10月21日水曜日

バクマン。


読者のためより、自分のために

監督:大根仁
上映時間:120分
パンフレット:720円★★★★★(ジャンプコミックスを模したカバー帯風デザインは見事!監督・キャストにとどまらず、原作者から編集者までいろんな方のインタビューが乗っていて読み応えたっぷり)

原作を読んだことがなく、「「バクマン。」って「漫才を組む話なのかな~」と思っていたんですが、それは勘違いだったことに映画の予告編を見て気付きました。漫画(特にジャンプ掲載作品)を描くメタ漫画ってすごい面白そうで、原作も読みたくなりました。大根仁監督ということで「モテキ」の時の背景演出を思い出し、「今回もきっとサブカル小道具による背景演出バッチリなんだろうな」と思ってましたが漫画執筆部屋・編集部・着ているTシャツ等こだわりを想像以上に感じれました。(ただ「モテキ」のほうが主人公1人の人生を深堀して想像出来るっていう点で、背景演出の面白見をより感じれたように思います)
この映画、青春メイクドリームの疾走感が気持ちよかったです。特に序盤でシュージン・神木隆之介とサイコー・佐藤健が原作と作画でコンビを組み、はじめて漫画執筆をし、はじめて出版社持ち込みをし、編集の山田孝之に「え、はじめての作品なの?」と驚かれ名刺を渡され、そこからどんどんトライ&エラーで漫画の腕と評価をあげていくのがすごい楽しいかった。そして、実際に書かれた漫画が、ちゃんとしてるしたくさんあって、「これだけのオリジナル原稿どうやって用意したんだろう」ってすごい疑問に思いました。出版社の協力があったとしても、あの量はすごい。
自分的にはサイコーとシュージンの連載が決まって、高校生漫画家バトルがはじまる直前までが特に楽しくて、そこからは少しトーンダウンする感じでした。個人的には、ペンを剣に見立て白バックでサイコー・シュージンがエイジとバトルするシーンよりも、実際に机に向かって漫画描いているシーンのほうが面白かったです。
映画を見てて、サイコーかシュージンどっちかの親が「うちの子をそそのかさないで!」ってそのうちしゃしゃりでてくるだろうと思っていたんですが、叔父役の宮藤官九郎がわりと出番多いのに対して、両者の親は映画が終わるまで一切出てこなくてびっくりしました。サイコーとシュージンお互いの自宅描写さえない潔さ。フィクションにおいて、語る上で邪魔になるものは中途半端に映すより、一切描かないという選択肢もあるんだなと思いました。
あと、この映画のヒロイン小松菜奈が佐藤健に対して「先に行くから」と言って別れたのに対して、映画のラストシーンを飾る「この世は金と知恵」で彼女を模したヒロインが最終カットで「ずっと待ってる」と言って締めるところに、者が自分の作り出すフィクションによって少しだけ自分の現実を救う様が見れたのがよかったです。打ち切りの憂き目にあったんだし、最後は自分のために描いたっていい!許す!