監督:想田和弘
貧乏ヒマなし、天才ヒマなし
ようやく名古屋で上映されたので、「演劇1」「演劇2」ぶっつづけで5時間42分見てきました。2部とも今池シネマテークの座椅子席で見ましたが、腰もお尻も痛くならずあっという間で尺の長さをものともしない驚きと興味の連続でした。
平田オリザさんの存在自体この作品を通じてはじめて知りましたが、こんな天才が日本にいたとは!映画を見まず思ったのは、「この人の演劇みたーーーい」ってこと。前回のあいちトリエンナーレには来たみたいだけど、今年も来てほしいなぁ。
平田オリザさんが国内海外問わず、脚本を書き、劇演出し、演劇ワークショップ開くなど、いわゆるアーティスト的活動も多岐にやりつつ、劇団体の経費チェックや劇団員の給料交渉などそういう泥臭い仕事も自らやっているのにビックリ。
映画中「収入は色々あるんですけど、演劇やっている以上お金は出ていってしまう」「演劇は一番たいへんな遊び」との平田オリザさんの言葉があるんですが、これだけの天才でも演劇というものをお金に苦労しないで続けるのはとても難しいという現実をまざまざとみせつけられました。
「演劇って、やってるヤツが一番楽しむ芸術だから好きじゃない」という説をどっかできいたことがあり、「あーーー、たしかに」と思ってなんかあんまり食指が向かなかったのですが…「こんなに大変な思いをしてでもやり続ける遊びなら、もっと積極的に見に行きたいナ」と考えをあらためさせられました。
劇中、ロボットを使った演劇が実験上演されるのですが、それにチャレンジしていくときのオリザさんが「こんな間違いなく、世界で初めてということが出来るなんて!」と興奮してたのが、とってもかわいかった。
その上演成功後、色んな人に「アレ、どうやってやってるんですか!?」と聞かれ「中にちっちゃいヒトがはいってるの(笑)ちっちゃいヒトを見つけるのが大変なのよ(笑)」というオリザさん。天才がこういう興奮を持って生きているということになんか勇気づけられました。
そして、まさかの寝落ちエンディング。寝る間を惜しんで稽古をつけているオリザさんが、なんと稽古中いびきを掻いて寝てしまう。そのいびき音をバックにしてのエンドロール。
オリザさんがうとうとしながら「そこもっとタイミング早く!」と稽古づけしつつ、ついには完全に寝てしまう姿に、多分死ぬ時も稽古をつけながら死ぬんじゃないかしらと思わされました。