2013年2月26日火曜日

ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日(126分)

監督:アン・リー
原題:Life of Pi
少年は残酷なトラ飼う

はじめて予告編を見た時から「へんな映画!」と思っていましたが、実際本編をみてみたら予告編以上にへんな映画でした。好きでも嫌いでもないけど、鑑賞後なんか心にひっかかる作品です。
心にひっかかる一番大きな理由は、ラスト急に大きな解釈の余地があらわれることです。
この映画、超自然の美しい映像とともに海難事故後の少年と虎の過酷なサバイバル生活を描くのに尺の大半が使われているのですが、終盤「今までの映像は、全部人間を動物に置き換えたメタファー」というひっくり返しの可能性があらわれて、「えっ!えっ!本当のとこどっちなの!」となってるうちに映画が終わるという作りなんです。なので、映画が終わった後もこの映画のことを振り返って考えてしまいました。
とりあえずの私の解釈は、「虎は少年の中にある野生の象徴で、実際は人間同士の殺し合いがあった」という方向に落ち着いてきました。遭難直後のボートには虎の気配がないのに、ハイエナがシマウマ・オラウータンと殺した瞬間に虎があらわれる、これはオラウータン=母親を殺されたことによって少年に残忍な野生が目覚めたことをあらわしているのかなと感じました。また、メキシコに漂着した後、虎が少年に振り向くことなく森に去ったのは、助かった安堵とともに少年の中の野生なるモノが2度と取り戻せなくなってしまったことをあわらしているのかなと思っています。まー、自分の野生が失われたことで、少年があんなに号泣するってのはちょっとおかしいような気もするので、もっとしっくりする説もある気がしますが。
また、映画を彩る動物たちには本当に驚きました。動物園で見た実際の動物たちより100倍生き生きしてるし、所作に不自然なところが何もない。船酔いする動物なんて初めてみたけど、きっとこれ以外ありえないという演技でした。実際見たことがある動物が描かれている分、そのCGの演技にはアバターの時よりも驚きました。このクオリティで「かってにシロクマ」とか「プーさん」とかを実写映画化したら、全然原作とはまた違う味わいがあってすごい感動出来る気がします。

2013年2月23日土曜日

ダイ・ハード ラスト・デイ(98分)

監督:ジョン・ムーア
原題:A Good Day to Die Hard
無敵男のこわがるモノ

今回人生はじめてのダイハードでした。
なにより印象に残ったのは、スーパーマリオのスター状態なブルース・ウィリスの無敵感。どんな銃撃戦でもブルース・ウィリス扮するジョン・マクレーンには1発も弾が当たらない!プログラムコードに無敵とかかれているとしか思えない!各戦闘が終わると洋服や顔などにボロボロ演出がされるものの、「いや、あの爆発でコノ損傷って!」っていうレベル。「こんなおっさんがなぜ無敵?」っていうアクションと外傷のギャップがおもしろく、過去作も見たくなりました。
映画の舞台はロシアだったのですが、終盤チェルノブイリに乗り込むことになり「あそこ、もう安全なんだよな?」ってジョン・マクレーンがビビるシーンに、時がたてば福島原子力発電所も社会派映画だけでなく大型エンターティメントにも登場したりするのかなと思いました。おなじく最近の大型エンターティメント「トランスフォーマー ダークサイドオブザムーン」にチェルノブイリが描かれていたのには、「へー、現実の事件を反映したりするんだ」と思うくらいでしたが、無敵男ジョン・マクレーンが被爆を怖がるのはしっかりとしたギャグになっていて、うまく言えませんが時間経過がエンターティメントにタブーを許すっていうのはあるんだなと感じました。
あと、タブーをくすぐられるのって、なんかすごいおかしみがありますね。特に「けしからん」になるギリギリ手前のところって、なんかが漏れそうなおかしみがある。(でも、思いっきり「けしからん」サシャ・バロン・コーエンも、おもらしレベルで楽しい)

2013年2月19日火曜日

演劇1(172分)演劇2(170分)

監督:想田和弘
貧乏ヒマなし、天才ヒマなし

ようやく名古屋で上映されたので、「演劇1」「演劇2」ぶっつづけで5時間42分見てきました。2部とも今池シネマテークの座椅子席で見ましたが、腰もお尻も痛くならずあっという間で尺の長さをものともしない驚きと興味の連続でした。
平田オリザさんの存在自体この作品を通じてはじめて知りましたが、こんな天才が日本にいたとは!映画を見まず思ったのは、「この人の演劇みたーーーい」ってこと。前回のあいちトリエンナーレには来たみたいだけど、今年も来てほしいなぁ。
平田オリザさんが国内海外問わず、脚本を書き、劇演出し、演劇ワークショップ開くなど、いわゆるアーティスト的活動も多岐にやりつつ、劇団体の経費チェックや劇団員の給料交渉などそういう泥臭い仕事も自らやっているのにビックリ。
映画中「収入は色々あるんですけど、演劇やっている以上お金は出ていってしまう」「演劇は一番たいへんな遊び」との平田オリザさんの言葉があるんですが、これだけの天才でも演劇というものをお金に苦労しないで続けるのはとても難しいという現実をまざまざとみせつけられました。
「演劇って、やってるヤツが一番楽しむ芸術だから好きじゃない」という説をどっかできいたことがあり、「あーーー、たしかに」と思ってなんかあんまり食指が向かなかったのですが…「こんなに大変な思いをしてでもやり続ける遊びなら、もっと積極的に見に行きたいナ」と考えをあらためさせられました。
劇中、ロボットを使った演劇が実験上演されるのですが、それにチャレンジしていくときのオリザさんが「こんな間違いなく、世界で初めてということが出来るなんて!」と興奮してたのが、とってもかわいかった。
その上演成功後、色んな人に「アレ、どうやってやってるんですか!?」と聞かれ「中にちっちゃいヒトがはいってるの(笑)ちっちゃいヒトを見つけるのが大変なのよ(笑)」というオリザさん。天才がこういう興奮を持って生きているということになんか勇気づけられました。
そして、まさかの寝落ちエンディング。寝る間を惜しんで稽古をつけているオリザさんが、なんと稽古中いびきを掻いて寝てしまう。そのいびき音をバックにしてのエンドロール。
オリザさんがうとうとしながら「そこもっとタイミング早く!」と稽古づけしつつ、ついには完全に寝てしまう姿に、多分死ぬ時も稽古をつけながら死ぬんじゃないかしらと思わされました。

2013年2月16日土曜日

アウトロー(130分)

原題:Jack Reacher
監督:クリストファー・マッカリー
アウトローなぼくちん、痴話げんかも仲裁

いやー、どこがダメとははっきり言い切れないけどなんかダメな映画でした。
せっかくなので、どうしてこんなにのれなかったのか感じるのか考えてみようと思います。まず、一番大きいのは、冒頭の犯人視点で描かれる無差別殺人事件以上に面白い絵がないこと。トムクルーズのアクションシーンもありますけど、月並みのものでいまさらドキドキ感がない。。。冒頭のレンズからの泳いだ視線で標的を決めていくシーンはなかなか楽しかったのですが、そこがクライマックスになってしまったのが残念でした。
あと、トムクルーズ演じるジャック・リーチャーに共感も好感も全然わかないっていうのも大きい。やっぱ、TINTIN同様こういう“自分から巻き込まれていく”型主人公って、個人的にあんまり好きじゃないです。ま、あれだけ「オレは何にもしばられない!」「オレの正義には法は関係ない!」とカッコいいこと言っておきながら、ラストは“バスで同乗したカップルのDVの仲裁”を匂わせて、エンドロールが流れるのにはちょっと笑いましたけど。
笑ったといえば、悪役ゼック(ロシア語で囚人の意味)が「オレは指を切り取って凍傷と壊疽を防ぎ、生き残った」「片目も(強制労働かなんかで)変になったけど、生き残った」と囚人自慢をし、自分の舎弟の失敗も「死以上の特別な存在をアピール(=指を噛み切る)」することで償わせようとしていたのに、最後自分自身はあっけなく銃殺されるところも「おまえ、かんたんに死ぬんかーい!」とズッコケ感があっておかしかった。あの自慢はなんだったんだっていう。。。あと、汚職警官が「ゼックのおそろしさは後でわかる」のたまってましたけど、映画が終わっても一向にそのおそろしさがわからなかったのもおかしい。他にも弁護士の無駄な谷間アピールとか・・・、そういうツッコミどころを楽しむ映画なのかも。あ、、、この映画の監督クリストファー・マッカリーって、「ツーリスト」の脚本書いたうちの1人なのか。なんかうまく言えないけど、合点!

2013年2月8日金曜日

DOCUMENTARY OF AKB48 NO FLOWER WITHOUT RAIN 少女たちは涙の後に何を見 る?(128分)

監督: 高橋栄樹
あっちゃん、AKBやめるってよ

 「お前に優子の何が分かる!」と喧嘩していたアイドルファンがバルト9にいたという前作の逸話がとても好きで、それを疑似体験したく自ら企画して人を集め総勢18名で一緒に映画に行きました。残念ながら、映画館で喧嘩は起きませんでしたが映画の後の飲み会は大変盛り上がりました!

311を背景に「大きな絶望の中でも大勢の人に希望を与えうる存在」としてアイドルの可能性をみせた前作に対して、今回はあまりに内側の話でビックリしました。
「あっちゃん、AKBやめるってよ」「恋愛に制裁を」と大きく2つの切り口で語られる今作。それはそれで非常に興味深くおもしろかったんですが、前作では「こんなに面白いなら、近づいて楽しもう」と思わされたのですが、今作では「はまりすぎると怖いから、12歩引いた距離で楽しもう」と思ってしまいました。
映画中繰り返されるメンバーの恋愛スキャンダル発覚とその処罰。映画より現在20132月には、恋愛スキャンダルへの反省の意を峯岸みなみが坊主にすることで表したというさらにエスカレートした現実。社会的にどうなのうんぬんはおいといて、超マクロなヌルアイドルヲタ視点として「こんなもんに本気はまったら、私生活に支障がでるわ!」とかなり怖じ気づきました。自分の推しにあんなことがおこったら、仕事とかちゃんといける自信ないですよ、私。
ただ、東京ドーム初日1曲目「パーティが始まるよ」直前の初期メンバーだけの円陣を見たら、他の初期メンバーに比べるとまだ爪痕が薄い峯岸みなみが「まっさきに思ったことはAKBを辞めたくない」と、AKBにしがみついた気持ちもちょっと分かる気がしました。
また、今作では恋愛スキャンダル以外に暗雲があまりなく、恋愛スキャンダルさえおこさなければ、AKBでは「夢と希望にあふれたアイドル生活」がおくれるとミスリードしかねない構成なのも怖かった。いや、総選挙退場時に運営推し度合いとファン人気のアンマッチに悩んでか、光宗薫さんが舞台裏で倒れこんだのも充分恋愛スキャンダル以外の明暗ではありましたが。ただ“賢明”なことに彼女はすぐにAKBを辞めてしまったので、その明暗が味わいつくせず“残念”に思ってしまいました。
あと、私、松井珠理奈さんのことがかなり好きでして。今回は彼女の出番が多くてうれしかったのですが、彼女が「恋愛なんて、いつでも出来るじゃないですか!AKBは今しかできないですよ!」とあっけらかんと言いはなったのは、清清さが超越しすぎてて正直萎えました。それに対して、麻里子様が「いいなという人があらわれても、その人は運命じゃない人って思うようにしています」っていうのは、人間的な感情があふれた諦め方で素敵で、総選挙のスピーチに続きまた尊敬の念が増しました。いや、でも珠理奈はまだ15歳だからしょうがないか・・・

2013年2月3日日曜日

ニュータウンの青春(95分)

監督:森岡龍
飯田先輩 かたぎやめるってよ

2012年タマフルシネマランキングで、高橋洋二さんが「浦安の桐島」(6位)と絶賛していたこの作品、よーやく名古屋に来たので見に行きました。(ちなみに、高橋洋二さんが提唱する他の桐島は、8位「ふがいない僕は空を見た」=セックスをする桐島、7位「悪の教典」=殺される桐島、5位「SR3=桐島の素、1位「桐島、部活やめるってよ」) 
主人公 カズカズと、中学の同級生 豪一と飯田先輩 のコントラストが最高!富永公園での男同士のイチャイチャ、ずっとみていたかった!
謎のロケットで紙吹雪を噴射して、それを拾い集めるおもちゃで遊ぶ彼ら。理由もなくしょうもないこと集い遊んでいられた頃...それがどれだけ愛おしく貴重な時間だったかと大爆笑しながら切なく感じ取れました。 
特に好きなシーンは、カズカズへの誕生日サプライズ失敗の後、豪一の妹が「私のせいかな?私嫌われたかな?」と部屋まで謝りにくるところ。「ちがうよ。みんな嫌いじゃないよ」と答える豪一のお兄ちゃん的優しさにジーンときました。
あと、富永さんの部屋に不法侵入して、「オレ、この服好きだったんだよなー」「お前、コレか!俺はコレ!」と憧れの女性の服をさわりながら男同士特有の盛り上がりをみせるところも好き。その後「オレ、あの人のなんでもないのな…」とつぶやく飯田先輩も切ない。この愛しいバカ3人には、みんな幸せになってほしいなと心底願ってしまいました。

2013年2月1日金曜日

96時間 リベンジ(92分)

ニーソンの運転教習所
監督:オリビエ・メガトン
原題:Taken 2

前作の評判がとてもよかったので期待してたのですが、ちょっとガッカリな出来でした。

ただ、それは私がかなり変則的なスタイルで鑑賞したせいかもしれません。先日行った旅行の帰りのフライトでこのタイトルを見つけ「シネマハスラー課題作品!ちょうどいい!」と再生。「92分だし見終われるだろう」と鷹をくくっていたのですが、残り15分を残して目的地に到着。残りを確認に映画館に行くという、なんともワクワク感のない映画体験。

つーか、飛行機の中で見るにはアクション映画はあいませんねぇ。あのちっちゃい画面では、はげしいアクションで何が起こっているのかまったくキャッチアップできない。行きのフライトで見た「モンスター上司」はちょうどよかった。今度からはコメディを選ぶようにしようと思います。

で、「96時間 リベンジ」ですが、その道のプロ リーアム・ニーソンに対して、敵がぬるすぎることに一番ガッカリきました。復讐の方式「生け捕り&母娘も殺害」にこだわるわりに、肝心な時に見張りをゆるくしてリーアム・ニーソンを取り逃がすし。あと、興ざめだったのは母親を「バラバラにして、アメリカに送り返してやる」と言いつつ、中途半端なエロ演出で時間をかせぐところ。復讐なんだから、もっと本気で取り組めよ!そんなんだから、お前ら全滅するんだよ!

ペーパードライバー歴12年の私としては、仮免許しかもっていない娘が車の運転させられるところはドキドキでした。けど、キム、運転ふつうにうまくて拍子ぬけ。免許所得試験に2回も落ちてるからこそのど下手なカーチェイスを見たかったです。やっぱ、リーアム・ニーソンンの個人授業を受けたら運転もうまくなるのかなぁ。