2015年11月27日金曜日

ラスト・ナイツ


最近年末は、欧米の忠臣蔵

監督:紀里谷和明
原題:Last Knights
上映時間:115分
パンフレット:820円★★☆☆☆(見開きに「今、日本の心が世界に羽ばたく。」と大きく載っているのにちょっとクスリとくる)

紀里谷監督作品、今回はじめて見ました。過去の作品であまり良い評判を聞いたことがなかったので心配だったんですが、良くも悪くも普通でした。なんとなくもっとアクの強い作風の監督のイメージをもってましたが、同じく忠臣蔵をテーマにした昨年の「47 RONIN」にくらべると、独特の味みたいなのがなくてわざわざ忠臣蔵を海外キャストでやる必要も感じられず、珍作の「47 RONIN」のほうが個人的には好きでした。
領土没収から1年、主人公のライデン(クライヴ・オーウェン)がダメ人間になったフリをしつつ、敵を油断させ虎視眈々と復讐の機会を狙っているんですが、せっかく敵を油断させることに成功し仲間の騎士団と合流出来たのに、敵となるギザ・モットの城に侵入したらわりと早い段階で敵に見つかってしまっていたのがもったいなかったです。1年間かけて相手をあざむいた甲斐が感じられず、あんまり溜飲を下げることが出来なかったです。
あと、複雑な話でもないのに、なんか分かりにくいところがあるのが不思議でした。特に、最後、結局ライデンは死んだのか、それとも処刑されずに奥さんのところに帰れたのかが、私にはよく分からなかったです。わざと時系列逆に撮っているようにも見えるし、奥さんのところに行ってから処刑されに行ったようにも見える。話的には処刑されてなかったら興ざめなんですが、なんか分かりにくいんだよなぁ。

2015年11月20日金曜日

恋人たち

人の痛みにやさしくするのって、難しい

監督:橋口亮輔
上映時間:140分
パンフレット:850円★★★★☆(この映画が、ワークショップからキャスティングを決め、あてがきで脚本を書いた特別な作品であることがよくわかります)

橋口亮輔監督作品は「二十歳の微熱」をずっと前にレンタルビデオで見たことあったようなおぼえがあります。が、どんな作品だったかあまり記憶がないので、ほぼ今回が初鑑賞な感触でした。
この「恋人たち」は、自分にとっては正直感想を書くのに窮する作品でした。家に帰って、パンフレットを読んで「あぁ、そういうことだったのか」とようやくちょっと腑に落ちた感じ。自分の痛みを、生きる糧にする人、気付かないようにする人、抑える人、そういう3人が味わう絶望と生きていくこと自体への希望を描いたような作品です。
メインキャスト3人の中では、田舎で夫とその母と暮らす瞳子のエピソードが一番見ていて面白かったです。皇族オタクで暇さえあれば自分が雅子様を見に行った時のビデオを見ている彼女、「雅子様に会える(というか生でちょこっと見れるだけ)」ことでテンションあがった若い頃の自分をタバコをくゆらせながら少しだけ顔をゆるませてみている彼女の、今の彼女にはこれしか楽しみがないのか・・・という行き詰まり感は自分にもよく理解できるものでした。
姑が製品についていた粘着力の弱いラップを壁に貼り付けて再利用している様とか、旦那が肩をたたくと夜のお役目をしなきゃならない合図とか、すごいひどいことが起きてるわけじゃないのにどこにも行けないという深い絶望を感じる風景でした。そんな彼女が三石研扮する藤田とニワトリを追いかけた時にみせた、興奮した表情の乙女な感じ。腐った日常の中で、ささいな興奮がもたらされると、ああいう顔してしまうこともあるかもと納得感ありました。笑える部分も瞳子のエピソードが一番多かったです。このエピソードがなかったら、ちょっと作品として見ているのがつらすぎたかもしれません。
この作品は登場人物ほぼすべてが自分の痛みを持っているのですが、ほとんどみな他者の痛みには無関心でした。んな中、アツシの同僚で、「片腕がない」という目で見て周りが見てすぐ分かる痛みを持っている黒田の他者へのまなざしはとても優しかったです。アツシからの「なぜ、片腕ないんですか?」という質問に「ロケットで吹っ飛ばしちゃった」と答え、その答えに笑ったアツシに「笑うのはいいんだよ。腹いっぱい食べて笑ったら、人間なんとかなるからさ」と応じる黒田。自分の過去そして現在も存在する痛みを笑われても、それが相手の元気になるんならと差し出せる強さがかっこよかったです。だからといって彼のようになりたいかというと、彼のようになりたくもなかったりもします。だれかの痛みを積極的に減らそうと働きかけるのは、自分には荷が大き過ぎて。。。
離婚調停しにきたアナウンサーが相談相手の弁護士が泣いたと勘違いして、勝手に心が楽になっていたエピソードを見て、他人が自分の痛みに共感してくれたと思うだけで、人って救われたりするんだなと感じました。だから、せめて相手の話を聞いて「うん、うん」ってうなづいてはおこうと思いました。

2015年11月12日木曜日

WE ARE Perfume WORLD TOUR 3rd DOCUMENT

一緒に「WE ARE Perfume」と言わせて

監督:佐渡岳利
上映時間:120分
パンフレット:884円(★★★☆☆:各公演のセットリストが乗っていて、数々のダメ出し会議を経てベストセットリストを模索したことが感じられます)

Perfumeのドキュメンタリー映画、同じくPerfumeファンの姉と一緒に見てきました。私も姉も、かれこれ8年半Perfumeファンでしてファン歴がそこそこ長いので、Perfumeを語るというのが、ほぼ自分語りになりそうで、映画の感想にならなそうな気がします。が、そんなPerfumeのことをわり長い間見てきた私にとっても、この映画ではいままで知らなかったPerfumeが見れて、より一層彼女たちの奇跡は彼女たちの不断の努力が源泉になっているんだという思いが確信になりました。
私がPerufmeを好きになったのは、2007年3月22日名古屋ナディアパークヤマギワソフトのDVD「FAN SERVICE BITTER」のリリースイベントです。それまでも、申し訳ないとで宇多丸さんや掟さんのDJでPerufmeの曲を耳にしたことはあったのですが、その日初めて生で彼女たちを見たらその瞬間に大好きになってしまいました。ちょうどその時、私は仕事を辞めて実家に戻ってきたばかりで、時間があるけど周りに遊べる友達もいなく暇でした。なので、「よし、これに自分の時間を出来るだけ使お!」と速攻決意しました。毎日毎日繰り返し「FAN SERVICE BITTER」を見て、そして実家でそんな私の様子を見ていた姉も「一人でライブ行くのもさみしいだろうし、一緒に付き合ってあげる」と次の現場(おそらくハレパンさんの対バンイベント)についてきて、一度見て速攻ファンになってました。2人で現場へ足を運ぶたびにどんどんPerfumeが売れていき、ある種社会現象に自ら加わったような不思議な感覚を味わいました。Perfumeを通じて、毎日毎日どんどん世界がひろがっていくのを肌で感じました。この映画を見ていて、はじめてPerfumeを見た時はお客さん50人位だったのに、今では3度に渡って世界ツアーもしているグループになり、そして彼女たちはいまでも世界を広げ続けているんだなぁと、あらためて彼女たちのファンであることを誇りに思いました。
私がこの映画ではじめて知ったPerfumeの出来事は、メンバー発信でライブギリギリのタイミングでセットリストを変更していたということ。Perufmeが人一倍努力していることは知っていましたが、内容にかかわるところはスタッフが決めたとおりにやっているのかなと思っていました。でも、LA公演でお客さんとのグリーティングイベント直後にあ~ちゃんがファンの人にもらったリボンをつけたまま「気になるところがあるんだけど、、、「いじわるなハロー」でお客さんのテンションが落ちるから「ワンルームディスコ」にかえれないか」と真剣な面持ちで提案し、そしてそれを傍で聞いてたmikiko先生が「とりあえず、ギリギリまで調整しよう!」と試す。そして、本番ではよりよいステージなっている。ギリギリまで妥協を許さない難しい調整がメンバー発信で行われていて、「そりゃ、Perfumeのライブは最高なわけだ」と思いました。
「3人あわせて、Perfumeです!」を英語にすると「We are Perfume!」になるというのもうれしい発見でした。かしゆか、あ~ちゃん、のっちだけでなく、PerfumeにかかわるスタッフそしてファンすべてがPerfumeなんだという広がりを感じられました。
あ、あと、映画終盤に出てきた所属事務所・アミューズの大里会長の酔っ払いっぷりが面白かった。せっかくメンバーがいい話をしているのに、乾杯したくてしょうがなく飲みたくてしょうがなさそうなおじさん!そんな、彼も含めて「We are Perfume!」です!

2015年11月7日土曜日

ヴィジット


孫のためなら、えんやこら

監督:M・ナイト・シャマラン
原題:The Visit
上映時間:94分
パンフレット:700円(映画論客3人のシャマラン復活を喜ぶ座談会が面白い)

シャマラン監督作品は、「シックス・センス」「ヴィレッジ」と一昨年の「アフター・アース」を鑑賞していました。「最後にどんでん返しのお土産」をくれる監督というイメージだったのが、一昨年の「アフター・アース」を見て「あれれ?お土産ないのーーー!?」ってちょっと残念に思ってました。そして、この「ヴィジット」。ちゃんとお土産がある上に、めちゃくちゃ怖くて、そして面白い!「シャマラン監督なんて、どーぜ最後のどんでん返しネタ一発がウリなんでしょ」とかちょっと思ってて、ごめんなさい!これ1本でまだ未見のシャマラン映画が見たくなりました。
この映画振り返って考えると、怖い&仕掛けにビックリするだけでなく、映画内で姉弟が撮り続けるドキュメンタリー映画としてちゃんと成り立っているし、姉弟の成長物語としてもしっかりしていて、あらためてすごいと思います。何かを創作することで癒せる物事があるということが、姉制作の映画や弟のラップからよく伝わってきます。エンドロールの弟のラップは笑えるというよりも、あの訪問がこのコのトラウマになってなくてよかったな~って安心出来ました。姉弟が自分たちの父親が家を出て行ったことがきっかけで身についてしまった心の癖みたいなものが、この恐怖体験で強引に乗り越えられたというのもサッと描かれているけど救いがあるとともに子供の心の強さへの信頼があっていいなぁと思いました。
ちょっと悲しかったのは、最終日のボードゲームが流れ解散(?)になって、てんわやんわした際に祖父母ともに姉弟に「お前のことなんて嫌いだ!」って言い放つところ。祖父母の属性や心理状態はどうあれ、個人的には姉弟のことは真面目に愛していた可能性を残す含みを持たせてほしかったなぁ。この7日間が「孫がいる人生を体験してみたい」というそういうモチベーションだけで保たれていたとすると、ちょっと虚しく思えます。でも、まあそういう愛の含みがないからこそ姉弟の二人が祖父母に歯向かえたということかもしれないですね。ちょっと愛を感じてたら、冷蔵庫のドアあんなにパカンパカンできないと思うもん。