2015年9月23日水曜日

進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド


映画オリジナルキャラクター、心臓をささげる

監督:樋口真嗣
上映時間:88分
パンフレット:720円(★★★★☆:町山智浩さんが4ページにわたっていろいろな映画を引用してこの映画化に関して解説していて面白い。そして、なぜか最終的になくなっていたシーンも多いことがわかる)

1作目の「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」を見た後「ムービーウォッチメンで当たらなければ、後編は見なくていいや」って思ってたんですが、番組で扱うことになったのでしぶしぶ見に行きました。
まず、映画とは関係のないことなのですが、シネコンで取った席、隣の人が予告編からずっとひとりごとをぶつぶつ言っている&手にポリ袋を持っていてカサカサずっとうるさくて。本編がはじまってもとまらず気が散ったので注意したかったんですが、よく分からないひとりごとをずっと言っていたので注意したら大声を出されたりしないか怖くなって、映画開始10分くらいのところで前方隅の空いている席に移動しました。すると、今度は通路はさんで隣の方が開始20分くらいのところで鞄をいじりはじめて、「なんか食べるのかな?」とか思って目をやったら、なんとこの映画のパンフレットを読み始めたからビックリ。上映中にパンフレット読む人はじめて見た。そんなこんなで、近くの席の方が気になって、序盤は全然映画に集中できませんでした。序盤はわりと前作の回想シーンが多くて助かりました。
前編に対して「がんばっているのは分かるけど、おもしろくはない」という感想だったので、後編はかなりハードルが下げて見に行きました。そのせいなのかもしれないんですが、後編は「うまくいってはいないんだけど、わりと好き」という感じで面白くみれました。原作と全然関係ない話になっていくのが、私はけっこう好きです。唐突に出てくる謎のビーチ仕様の白い部屋でシャンパンを飲んだり、ビーチベットに寝そべったりしているシキシマ、彼の現実感のなさがどんどん加速していくのが面白かったです。なんの躊躇もなく、ミカサ演じる水原希子を足蹴りするシキシマこと長谷川博己にしびれました。前作と時も同じことを感じたんですが、一番漫画っぽいけど、実際は原作にはいないキャラクターってのが個人的にツボにはいりました。つーか、この映画が気に入って原作読む人は、シキシマが原作に出てこないことにがっくりくる可能性さえあるな。
外壁の穴をふせごうとするエレン達、べつに壁は修復してもしなくてもどっちでもよかったクバル、内壁を壊そうとするシキシマ、の壁をめぐっての思想の違いもわかりやすかったので、原作についていけなくなった私にとってはとりあえず理解出来てスッキリしました。また、ミカサがエレンを空中で助けるシーンやエレンとミカサが外の世界をはじめて見るシーンは、ずっと壁に閉ざされた世界を見ているせいかより美しいシーンに感じらました。ということで、原作ファンでも前編好きでもないのですが、後編はわりと楽しめました。ただ、やっぱり前後編じゃなくて1本にまとめてほしかったな。前編98分後編88分とあわせて186分あったけど、回想シーンも多かったので1本にして2時間半くらいの作品にまとめられたのではないだろうか。

2015年9月19日土曜日

カリフォルニア・ダウン


大災害発生、その時、即職場放棄する勇気

監督:ブラッド・ペイトン
原題:San Andreas
上映時間:114分
パンフレット:720円★★☆☆☆(写真はけっこうイイのが使われてる。サンアンドレアス断層が実際に起こした地震データがのっているが興味深い)

あまり前情報はもたず「カリフォルニア、どのくらいダウンするのかな?」くらいの気持ちで映画館に行きました。大地震により想像以上にカリフォルニアがダウンして絵的なスケール感はありましたが、パニック映画の醍醐味のひとつ「人間の本質があらわれる」という部分がいまいちで物足りなかったです。昨年の「イントゥザストーム」や、一昨年の「アフターショック」は、「災害より、実は人間がこわい!」「災害で気づいた、人間の絆!」みたいなのがうまくて切羽詰まった時の人間の行動に引き込まれたのですが、この「カリフォルニア・ダウン」では人間の切羽詰まり汁的なものがあまり感じられませんでした。
あと、主人公のドウェイン・ジョンソンは迷いなくかっこいいしマッチョなので、妻と子供を失った男の哀しみがあまり伝わってこず、この話にはミスキャストだなと感じました。実際、劇中ドウェイン・ジョンソンが妻のピンチを救ったあと、過去の事件に対する思いを語り彼女に心を開いたら、速攻で妻の心のお股もかぱーって開いてチュッチュしてましたし。はじめっから、妻の心はドウェインのさじ加減次第でべつに危機的状況でなくてもうまくやれたんじゃんっていう気すらしました。そうやって考えると、96時間シリーズを筆頭にいつも家族に拝信されるお父さんを演じるリーアム・ニーソンの役者的説得力はすごいなと感じました。この「カリフォルニア・ダウン」もリーアムが主人公だったら、もっと説得力ましたはず。(というか、妻の死なない「96時間 レクイエム」になってた気がする)
この映画、地震発生直後から速攻でダムが崩れたりビルが折れたり、建造物があまりにもろくて、「私が知ってる地震と違う!」いろいろ地震描写に違和感があったのですが、一番それはどうかと思ったのは「ドウェイン・ジョンソン、すぐに職場放棄し過ぎ!」ってこと。群発地震のため公のレスキュー隊員として出動要請されたのに、一般市民はほぼ助けず家族しか救っていないという。。。その間にヘリは墜落させるは、小型ジェットは墜落させるわ、好き勝手しすぎ!しかも、その小型ジェットを手に入れるために、ぶつぶつ交換した車、、、老夫婦とアイコンタクトで「お互い良いトレードしましたな」みたいな空気だしてたけど、それさっきショッピングモールで強奪した盗難車だから!ほんと、やりたい放題しすぎ!
映画終盤、家族は救出されたものの、地震や津波のためひっちゃかめっちゃかになったサンフランシスコの街を見て、「尺もないしこの後この映画どうなる!?」って思ったら、突然星条旗がたなびいて「ゴッドブレスアメリカ」的愛国精神を感じさせ、ドウェイン・ジョンソンが荒廃した街を見つつ「また作ればいいさ」って言って終わりという。。。「アメリカンスナイパー」もそうだったけど、アメリカ映画には星条旗エンディングっていうエンディングタイプがあるんだなと今回で思い知らされました。どっちらけになった話も星条旗だしとけば成立!

2015年9月11日金曜日

ナイトクローラー

彼が勤勉であることは否定出来ない

監督:ダン・ギルロイ
原題:Nightcrawler
上映時間:118分
パンフレット:700円(★★☆☆☆:文章たくさんなんだけど、寄稿コラムがあんまり映画と合致してなくてなんだかあんまり面白くない)

映画鑑賞後、劇中鳴り響いていたパトカーのサイレンがずっと耳鳴りし、自転車こぎながらなんども後ろを振り向いてしまいました。実際は気のせいで平和な帰路だったのですが、映画見終わった後町が違ってみえる映画でした。
この映画、薄気味悪い男が主人公で、かつ他の登場人物も自分のことしか考えていない嫌な奴ばかりなのですが(警察の人は真面目に働いていますが…)、不思議と鑑賞後アッパーな気分になる映画でした。
警察無線を盗聴し、事故や事件現場にかけつけ、悲惨な光景を撮影し、テレビ局に売る「ナイトクローラー」を紹介する世間に馴染みのない職業紹介モノとして面白いし、また持たざるものが手段を選ばず成り上がる、成り上がりモノとしても面白かったです。映画冒頭に金網やマンホールを盗みそれを売ることを生業にしている男が、映画の最後には会社の社長として見習い社員3人を従え街に繰り出していく。ジェイク・ギレンホール演じる主人公が、天職を見つけ、それに対して手段を選ばずがむしゃらにやって、成功するサクセスストーリーです。「手段を選ばず」の過程で行った非人道的な行為に罰がくだらぬままなので居心地の悪さが残るんだけど、その居心地の悪さが映画を見たあとの余韻としてちょっと癖になる感じでした。また、実際に裸一貫叩き上げで成功してる人は多少なりともこういう居心地の悪さを抱えてるんだろうなとも思いました。
しかし、この映画の主人公、100パーセント効率的利己的に動いてるだけであまり感情がないのかなと思いきや、場面場面ではそうでもないところが出てくるのが不思議でした。スクープ映像を立て続けに撮りそれにより金を掴んだらグレーの4シートを赤いスポーツカーに買い換えたり、ライバルを偽装事故で大怪我を負わせた時に他のスクープ映像をほっぽってその事故映像を必死で撮りに行ったり、取引先の熟女を仕事を天秤にかけた交渉の末にねんごろになったりと、わりと「成功を形であらわしたい」「他人より上にたったところを目で確かめたい」といった泥臭い感情にまみれている部分があったりする。道徳に反する行為を「バレなきゃいい」っていう感じで心の痛みなくやすやす出来てしまう主人公・ルーが、ある部分では人間らしさを持ってる。きっと彼はこれからも、望まれる映像を期待以上の出来で撮り続けるんだろうな。かけた感情と泥臭い感情をもって。

2015年9月4日金曜日

ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション


「あいつは、ギャンブラー」は褒め言葉

監督:クリストファー・マッカリー
原題:Mission: Impossible - Rogue Nation
上映時間:132分
パンフレット:720円★★★☆☆(写真がいっぱい。トムクルーズがいかに自分自身でアクションシーンをやっているかのエピソードが満載。)

ミッション:インポッシブルシリーズほかの作品は未見で、今回はじめて鑑賞しました。シリーズ5作目ということなので人物配置が理解出来るか心配だったのですが、全然問題なく楽しめました。冒頭からA400軍用機の外側に飛びついてるトム・クルーズにハラハラ!このシーンがノースタントなのはまじですごい。そして、ただハラハラさせられるだけじゃなくて、「サイモン・ペッグ、開ける扉そっちじゃねーよ!」的な笑いもあって、映画への期待値がいっきに信頼にかわったシーンでした。この冒頭のシーンもそうですが、トム・クルーズとサイモン・ペッグが少し離れたところで組んで作戦遂行するシーンの遠隔バディ感が面白かったです。一番好きなのは、オペラ座の舞台裏で作戦遂行するシーンで電子機器の映りをよくしようとサイモン・ペッグが「バンバン!」と機械を叩いたら、なぜかトム・クルーズがいるところの足場がグーンとあがってしまいピンチに陥るというくだり。サイモン・ペッグは自分の行動でトム・クルーズが危機に陥っていることすら知らず、悪気なく作戦遂行にあたっている、そのとぼけた感じが面白かった。
あと、外から見えるガラス張りの部屋に催涙ガスがたちこめて捕らえられるというシークエンス、最初トム・クルーズのシーンと最後に悪役ソロモン・レーンのシーンが対になっていて、ベタといえばベタだけど、おなじ構図の中でソロモン・レーンが悔しそうに外に向けて銃を撃つとことか、「逆にやったったで!」感を感じられてよいです。このシーンは頭の中でリフレインさせるだけで溜飲が下がるというかスカッとしますね。