うまい料理には、さからえない
監督:ジョン・ファブロー
原題:Chef
上映時間:115分
パンフレット:★★☆☆☆(720円/映画内に出てくる料理のレシピがイラスト付で載っているけど、難しそうでやれる気がしない)
ジョン・ファブローがアイアンマンの監督を断ってまず一番に撮った映画と聞いていたので、「いったいどんな映画なのか!?」と期待して見にいきました。めちゃめちゃ心あたたまるハートフルストーリーで、逆に映画見終わった後に「アメリカン・スナイパー」とか「フォックス・キャッチャー」とか後味の悪そうな現在公開映画が見たくなった不思議。
「他人の不幸で今日も飯がうまい」のではなく、「とにかくリアルに飯がうまそう」という、真の意味でのメシウマ映画でした。序盤から料理シーンがリズムカルで達者で、見ててめっちゃ料理したくなりました。私もあんなスピードでキュウリを切ってみたいです!タンタターン!
今回の映画、中盤の展開のネタバレ邦題サブタイトル「三ツ星フードトラック始めました」がついていたため、はじめから「いつ、フードトラック出てくるのかな?」という心持ちになってしまったのが残念でした。意外とそんなにすぐにはフードトラック出てこないから、このサブタイトルはやめてほしかったです。
はじめは雇われシェフ:ジョン・ファブローがオーナー:ダスティン・ホフマンや料理評論家:オリバー・プラットと対立してレストランをクビになったり、息子との仲がギクシャクしたりと障害がもうけられていたのですが、フードトラックが出てきてからはその掃除で息子とちょっと揉めたぐらいであとは障害なくうなぎのぼりにぐいぐいハッピーな展開で、逆に潔さを感じました。最後の元嫁との結婚エンディングとかうまくいきすぎて、もはやベタとも思えない展開です。
元嫁も息子も恋人も同僚も、はじめっからジョン・ファブローにやさしすぎすぎてちょっと不思議に思いました。なんで、みんなこんなに彼にやさしいのかなと考えたんですが、「彼の料理がうますぎて、みんな彼に胃袋を魅了されているんで逆らえないのかも」と思いました。そう思うと、映画に出てくる料理がもっとうまそうに見えてきます。しかし、同じ職場の恋仲のウエイターがスカーレット・ヨハンソンな時点で、これは負け犬の話ではなく何かを持ってる人の話であり、その持っているものをどう生かすのかという話なんだなと思いました。
雇われ監督としてビッグバジェット映画を成功させたジョン・ファブローが、インデペンデントではじめに撮った映画が、コレだったっていうのも興味深かったです。あと、軽く描かれているけどネットリテラシーが低い中年のおっさんがSNSを炎上させるという描写もすごい説得力あっておもしろかった。インターネットネイティブ世代の息子のつっこみ、「DMはフォロワーにしか送信できないんだよ」は金言。そして、炎上はチャンスというのも一理あるんだなと素直に理解させてくれる映画でもありました。