2015年9月11日金曜日

ナイトクローラー

彼が勤勉であることは否定出来ない

監督:ダン・ギルロイ
原題:Nightcrawler
上映時間:118分
パンフレット:700円(★★☆☆☆:文章たくさんなんだけど、寄稿コラムがあんまり映画と合致してなくてなんだかあんまり面白くない)

映画鑑賞後、劇中鳴り響いていたパトカーのサイレンがずっと耳鳴りし、自転車こぎながらなんども後ろを振り向いてしまいました。実際は気のせいで平和な帰路だったのですが、映画見終わった後町が違ってみえる映画でした。
この映画、薄気味悪い男が主人公で、かつ他の登場人物も自分のことしか考えていない嫌な奴ばかりなのですが(警察の人は真面目に働いていますが…)、不思議と鑑賞後アッパーな気分になる映画でした。
警察無線を盗聴し、事故や事件現場にかけつけ、悲惨な光景を撮影し、テレビ局に売る「ナイトクローラー」を紹介する世間に馴染みのない職業紹介モノとして面白いし、また持たざるものが手段を選ばず成り上がる、成り上がりモノとしても面白かったです。映画冒頭に金網やマンホールを盗みそれを売ることを生業にしている男が、映画の最後には会社の社長として見習い社員3人を従え街に繰り出していく。ジェイク・ギレンホール演じる主人公が、天職を見つけ、それに対して手段を選ばずがむしゃらにやって、成功するサクセスストーリーです。「手段を選ばず」の過程で行った非人道的な行為に罰がくだらぬままなので居心地の悪さが残るんだけど、その居心地の悪さが映画を見たあとの余韻としてちょっと癖になる感じでした。また、実際に裸一貫叩き上げで成功してる人は多少なりともこういう居心地の悪さを抱えてるんだろうなとも思いました。
しかし、この映画の主人公、100パーセント効率的利己的に動いてるだけであまり感情がないのかなと思いきや、場面場面ではそうでもないところが出てくるのが不思議でした。スクープ映像を立て続けに撮りそれにより金を掴んだらグレーの4シートを赤いスポーツカーに買い換えたり、ライバルを偽装事故で大怪我を負わせた時に他のスクープ映像をほっぽってその事故映像を必死で撮りに行ったり、取引先の熟女を仕事を天秤にかけた交渉の末にねんごろになったりと、わりと「成功を形であらわしたい」「他人より上にたったところを目で確かめたい」といった泥臭い感情にまみれている部分があったりする。道徳に反する行為を「バレなきゃいい」っていう感じで心の痛みなくやすやす出来てしまう主人公・ルーが、ある部分では人間らしさを持ってる。きっと彼はこれからも、望まれる映像を期待以上の出来で撮り続けるんだろうな。かけた感情と泥臭い感情をもって。