2012年9月3日月曜日

トガニ 幼き瞳の告発(125分)

原題:Do-ga-ni
監督:ファン・ドンヒョク
悪人がちゃんと成敗されるのは
エンドロール後こちらの世界

予告編の時点で「韓国映画でテーマがコレって、、、面白そうだけど、すげーしんどくなりそうだから見るのやめよ」と思ってたんですが、シネマハスラーに背中を押されて見てきました。 
純粋に、映画として面白かったことにまずビックリ。
聴覚障害者学校で実際に起きた性虐待事件の映画化なんて、そりゃしんどい話になるに決まってるじゃないですか。でも、コレ、話は重いですけど単純に“映画”としてもしっかり面白いんです。
双子の学園の校長と行政所長が“おいでおいで”するところや、子供をおいかけ襲うシーンにホラー映画的不気味さがあったり、裁判シーンの駆け引きに法廷サスペンス的ハラハラもあったり、<実話にもとづいた>という括弧書きを抜いても単純に映画として面白い。
クライマックス、機動隊の放水を受けながらも遺影を抱え叫ぶ主人公の姿は、絵的にもグッときました。エンドロール後のテロップで、実話として「スッキリ」させられてしまうところもすごい。こういう意味でスッキリしてしまっていいのだろうかと、少し戸惑いましたが、映画として面白いからこそ、多くの人の目に触れ心を動かし、エンドロール後の現実世界が動いたんでしょうね。
職員室で生徒をロッカーに叩きつけて暴力を振るっているのを見ても、何もしない先生たちが直接的な加害者ではないけどすごい怖かった。ここまで悲惨な事件につながらなくても、こういう「見ざる・言わざる・聞かざる」ってある。自分も日常的にやってると思う。先回タマフルにゲストで来られた大林宣彦監督の「ぼくたちはね、戦争中のこどもはね、正義ってものを信じてないんです。自分の正義を主張すると、必ず敵を作るんです。ぼくたちはね、何を信じるかっていうと、正気なんですよ。アートとは、正気を問うことなのよ。」という言葉が映画中思い出されました。正気を失わず行動に出ること。やっぱり、これが自分以外の誰かを踏みにじらない大切な方法なのだとあらためて感じました。