監督:呉美保
どうしようもなく重く、かけがえのない存在
映画の中の綾乃剛よろしく、重い重い家族の様子を間あたりにしながらもなぜか家族がほしくなった映画でした。水際のバラック小屋に暮らす家族の様子に「ヒミズ」を思い出しました。あの家も外に洗濯機があったなぁ。
脳梗塞で寝たきりになっている父親の性処理を担当していた母がそれを放棄し、かわりに姉・池脇千鶴が泣きそうな表情で父をしごいて抜いてあげていたシーンに、苦労を危ういバランスで支えあっている家族のさまざまなことを白濁と飲み込んでしまう哀しさを感じました。終盤家族の問題を飲み込みきれなくなって父の首を締め、それを綾乃剛に静止された後に「千夏」と父に自分の名前を呼ばれるところで号泣する池脇千鶴からなんともいえない感情が伝わってきました。家族って、哀しいけどどうしようもなくかけがいのない。池脇千鶴の不倫相手を演じた高橋和也の「(家族を)大切にしてるから、おかしくなるんじゃ!」っていう台詞にも妙に納得しまいました。
綾乃剛と池脇千鶴の激しいラブシーンが見所のひとつの今作ですが、その出会いのシーンもとてもよかった。パチンコ屋であった弟・菅田将暉に「なにか食わせてやる」と家に連れてこられた綾乃剛。「ねーちゃん、なんか作って!」とよばれ、奥の部屋から出てきて客人がいると知り胸のボタンを上まで止める池脇千鶴。フライパンでチャーハンを作り、「暑いっしょ」と内輪を手渡したり、そういうやりとりがすげーよかった。フライパンのまま出てくるチャーハンとそれをうまそうに食べる弟とか、そういう家族の関係性もその場面だけでみてとれました。
前科者の弟を好演した菅田将暉もよかった。山へ行く口ききをしてくれることになったあとのはしゃぎっぷりは、本当にかわいかった。高橋和也を刺して、「もう山に行けない」「母ちゃんに、姉ちゃんにらくさせたかったのに、、、」とこぼすシーンには泣きました。あとで調べたら、仮面ライダーWのフィリップ役の子でだいぶイメージがちがってびっくりしました。数年みないうちに、男子もだいぶ印象かわるんだなぁ。